故プリンス、伝説の『ブラック・アルバム』アナログ盤が発見される
故プリンス、伝説の『ブラック・アルバム』アナログ盤が発見される

 故プリンスの『ブラック・アルバム』はファンやレコード・コレクターの間では伝説となっている作品で、2枚組の『サイン・オブ・ザ・タイムズ』に続くリリースとして1986年から87年にかけてレコーディングされたが、正式にリリースされたのは1994年になってからだった。その理由も実にプリンスらしいもので、それまでの5年間でメインストリーム・ポップ界でスターダムに登り詰めた彼は、初期の作品を支持してくれた主に黒人のファンと再びつながる為に、自身の原点に立ち返ったファンク・アルバムの制作を決意した。ところが8曲録音し終わった時点で、「“邪悪な”何かが潜んでいる」と判断した彼は、自身のレーベルだったワーナー・ブラザーズにアルバムのリリースを中止するよう要求したのだ。議論の末、レーベルは要求を受け入れ、既にプレスしてあった50万枚のアナログ盤もほぼ全て破棄するという驚くべき措置も取った。

 ところが『ブラック・アルバム』の発売予定日直後から、流出したレコードから複製されたとみられるブートレグが広く出回ってしまった。ファンからの強い要望により、ようやく94年にワーナーはCDとカセットで発売したが、この正式リリースにはアナログ盤は含まれなかった。つまり現存する『ブラック・アルバム』の本物のアナログ盤は80年代後期に破棄を免れた数枚だけで、世界で最も希少価値が高いレコードの一つと言われているのだ。

 この超レアなレコードが最近5枚も未開封状態で発見され、話題になっている。ワーナー・ブラザーズで取締役副社長を務めていたジェフ・ゴールドという人物が運営しているウェブサイトRecordmeccaで3枚が売りに出され、その内2枚が1.5万ドル(約168万円)、最後の1枚が2万ドル(約224万円)で完売した。ゴールドによると、発見したのは同じくワーナーに務めていた元同僚で、自宅のレコード・コレクションと共に25年間保管されていたワーナーの未開封ダンボールの中に入っていたのだそうだ。この匿名の人物は、最近ターンテーブルを購入した娘にレコードを送ってほしいと頼まれてクローゼットを整理していたところ、このとんでもないお宝を発見したそうで、残り2枚の内1枚はキープ、もう1枚は来年オークションにかけるかもしれないとのことだ。

 ゴールドによると、今回発見された5枚以外に現存する1987年のアメリカ版『ブラック・アルバム』アナログ・レコードは、25年前に販売された2枚と、ゴールドのサイトで2015年に取り扱った1枚しか見つかっていないそうだ。