マセーゴ、“トラップ・ハウス・ジャズ”を掲げる新鋭の「クリエイティヴィティとユーモアが炸裂した初来日公演をレポート
マセーゴ、“トラップ・ハウス・ジャズ”を掲げる新鋭の「クリエイティヴィティとユーモアが炸裂した初来日公演をレポート

 “トラップ・ハウス・ジャズ”を標榜する唯一無二のミュージシャン、マセーゴによる待望の単独来日公演が2017年11月8日にビルボードライブ東京にて行われた。

 彼が登場する前、会場に流れたのはディズニー映画『ライオン・キング』でもおなじみの、エルトン・ジョン「Circle Of Life」の強烈なイントロ。そしてリアーナ「Work」、トラヴィス・スコット「Butterfly Effect」などの音源を経て、いよいよ本人のご登壇。しかも、現れたのはいつものステージ下手側ではなく、二階の客席に通じる階段という意表をつくスポットから。いきなり転がり込むようにステージの上に現れ、イントロ代わりの「Shut Up and Groove」や「I Do Everything」といった楽曲群で会場を温めていく。そして突如、自身のボイスパーカッションをその場でレコーディングしながら、強烈なヘッドバンギングとともにMPCを叩き始めた。合わせて自分のヴォーカルをどんどん重ねて録音していき、オーディエンスにも簡単なフレーズを歌わせながらインプロビゼーションで一曲を完成する場面も。小学生の図工の授業のような、プリミティヴな面白さが伝わってくるような瞬間だった。ライブの中盤では、スヌープ・ドッグやファーギー、ジュヴィナイル、果てには「もっとレジェンダリーな歌も歌えるぜ!」と仰々しくシルバーのグローヴをはめながらマイケル・ジャクソン「Dirty Diana」と、驚くくらい豊富なカヴァー・ソング・メドレーも披露。その後、終盤は「Girls That Dance」や「Send Yo' Rita!」などを歌い、畳み掛けるようにフィナーレへ。クラブのフロアと同じくらいのアツいヴァイブスが、ビルボードライブの客席を包んだ瞬間だった。

 彼の特徴といえば、やはりそのサックスの音色。「Wifeable」や、FKJとともに製作した「Tadow」など、サックスの音色が堪能できる楽曲は、観客の盛り上がりも格別。アグレッシヴなトラップ・ビートの上を自由に転がるようなマセーゴのサックス、そして、スタンダップ・コメディアンかのように常にジョークを言い放ち、ところ狭しとステージを走り回りながらのパフォーマンスは、いろんな意味で大きなインパクトを残したのではないかと思う。終始、はちきれんばかりの彼のクリエイティヴィティとユーモアが炸裂したステージであった。自身が生み出した“トラップ・ハウス・ジャズ”というジャンルを、これからどうやってさらに膨らませていくのか、未来への期待が高まる一夜となった。

Text:渡辺志保

◎公演情報
2017年11月8日(水)※終了
ビルボードライブ東京