ボーイズIIメンの原点を知る上では欠かせない最新カヴァー集『アンダー・ザ・ストリートライト』(Album Review)
ボーイズIIメンの原点を知る上では欠かせない最新カヴァー集『アンダー・ザ・ストリートライト』(Album Review)

 R&Bの歴史を語る上で欠かせない男性ボーカル・グループ、ボーイズ?メン。1988年、米ペンシルベニア州フィラデルフィアで結成され、1991年にモータウンと契約。同年4月に発売されたデビュー・アルバム『クーリーハイハーモニー』からは、デビュー曲「モータウンフィリー」がいきなり全米3位の大ヒットを記録し、2ndシングル「グッバイ・トゥ・イエスタデイ」も最高2位をマーク。翌1992年には「エンド・オブ・ザ・ロード」が通算13週のNo.1に輝き、同年の年間チャートを制覇した。

 1994年リリースの2ndアルバム『II』からは、「メイク・ラヴ・トゥ・ユー」、「ベンデッド・ニー」の2曲が首位、「ウォーター・ランズ・ドライ」が2位の大ヒットとなり、アルバムはアメリカだけで1200万枚を超える売上を記録。翌95年には、マライア・キャリーとデュエットした「ワン・スウィート・デイ」が通算16週の全米No.1をマークし、人気のピークを迎える。97年に発表した3rdアルバム『エヴォルーション』で2作連続の全米首位を獲得するが、2000年代に入ってからはエレクトロ・ブームの到来もあってか、90年代のような大活躍はみられなくなった。

 しかし、コンスタントに発表したアルバムのクオリティは決して低いワケではなく、彼らのハーモニーは今でも健在。それを知らしめたのが、最新作『アンダー・ザ・ストリートライト』。ソニー移籍第一弾となる3年振りの新作は、残念ながらオリジナルではなく、カバー・アルバムとしてのリリースとなったが、彼らの原点を知る上では欠かせない1枚。というのも、厳選された楽曲が、自身に影響を与えた古きソウルの名曲だからだ。最新のヒット曲をサラっとカバーする、安っぽい商業的なカバー・アルバムとはワケが違う。古いジャズやソウルを意識したようなアート調のジャケ写も、味があってイイ。

 フランキー・ライモン&ザ・ティーンエイジャーズの原曲を忠実に再現した「ホワイ・ドゥ・フールズ・フォール・イン・ラヴ」で華やかに幕を開け、同時期に一世を風靡したコーラス・グループ=テイク6とオール・アカペラでカバーした、ハートビーツの「ア・サウザント・マイルズ・アウェイ」に続く。モーリス・ウィリアムス&ゾディアックスの「ステイ」や、ドリフターズの「アップ・オン・ザ・ルーフ」などの軽快なアップから、フラミンゴスの「アイ・オンリー・ハブ・アイズ・フォー・ユー」など、夢見心地のスロウまで余裕でキメる、彼らの硬軟自在なハーモニーに感服。

 サム・クックの「アイル・カム・ランニング・バック・トゥ・ユー」、リトル・アンソニーの「ティアーズ・オン・マイ・ピロー」、エタ・ジェイムスの「ア・サンデー・カインド・オブ・ラヴ」の3曲は、同じ90年代を駆け抜けたR&B界のレジェンド、ブライアン・マックナイトとのデュエット。原曲が完璧すぎるが故、どれも決定打に欠けるような気もするが、ボーイズ?メンとブライアン・マックナイトのコラボというだけで、聴く価値はある。逆に、大人気ドラマ『グリー』で知名度を高めたアンバー・ライリーとカバーした「エニワン・フー・ノウズ・ホワット・ラヴ・イズ」は、原曲のアーマ・トーマスよりパワフルなアンバーの歌力に圧倒させられる。

 色褪せない名曲と彼らの絶妙なハーモニーが堪能できる、ボーイズ?メンの新作『アンダー・ザ・ストリートライト』。これから迎えるホリデー・シーズンに彩りを。

 ボーイズ?メンは、25周年記念ジャパンツアーのため、12月に来日する。


Text: 本家 一成

◎リリース情報
『アンダー・ザ・ストリートライト』
ボーイズ?メン
2017/10/20 RELEASE