森山直太朗、15周年の最後を飾る劇場公演【あの城】が千秋楽
森山直太朗、15周年の最後を飾る劇場公演【あの城】が千秋楽

 森山直太朗劇場公演【あの城】が、10月1日千秋楽を迎えた。

森山直太朗【あの城】写真(全4枚)

 音楽ライブだけでは伝えきれない表現への取り組みとして始まった森山の劇場公演は、【森の人】(2005年)、【とある物語】(2012年)に続いて、5年ぶり3作目。【あの城】も過去2作と同様、作・演出を森山の楽曲の共同制作者である詩人の御徒町凧が手がけ、劇中で歌われる楽曲の詞曲を森山と御徒町が担当した。

 出演者は森山、皆本麻帆、富岡晃一郎、町田マリー、黒田大輔といった個性的な俳優陣に加え、メジャーデビュー15周年を記念した全国ツアー【絶対、大丈夫】のバンドメンバーを務めた河野圭(Piano)、西海孝(Guitar)、朝倉真司(Percussion)、須原杏(Violin)、林田順平(Cello)も参加。音楽と演劇を融合させた独自性の高い創作を体現した。

 開演時間になると御徒町が客席に姿を見せ、小さな鐘を鳴らしながら「始まりますよ」と舞台の幕が開くことを告げる。森の中を模したステージに最初に登場したのは、森山。「こんばんは、ナオタリオ(森山の役名)です」と挨拶し、歌手・森山直太朗の原点とも言える「レスター」を弾き語りで披露。観客を【あの城】の世界に引き込んでいく。

 【あの城】で描かれるのは、敵国に侵略されて“あの城”から逃げてきた、幼い王子とその取り巻きたちの物語。「いつかは城に戻りたい」と願いながら国境近くの森の奥で野営を続けているが、食料も底をつき、生活を共にする人々の関係に微妙な影が差し始める。ナオタリオ(森山)、ミナ(皆本)、ダン(富岡)、カレン(町田)、エトー(黒田)、ニシミ(西海)、ティンジ(朝倉)は、敵国と戦う覚悟を決めて城に戻るべきなのか、王子を守るために逃亡を続けるべきかという決断を迫られるが、逡巡しているうちに“あの城”が敵国によって燃やされてしまう。戻るべき場所を失った彼らは、さらに混迷した運命へと巻き込まれていく。

 御徒町が紡ぎ出すストーリーに深みと彩りを与えるのはもちろん、森山の歌。セリフに込められた“幸せとは何か?”“自分とは何か?”という根源的なテーマと「Que sera sera」「雨だけど雨だから」「生きる(って言い切る)」などの楽曲が重なり合い、物語と音楽が有機的につながっていたのだ。「糧」「自分が自分でないみたい」など、この公演のために制作された新曲も披露。また、マイクを通さない生声での歌唱、客席から舞台に向かって歌うシーンが用意されるなど、通常のホールコンサートとは違う劇場公演ならではの演出も。“歌手・森山直太朗”の生々しい歌声を体感できたことも、この公演の大きな魅力だった。
 
 本公演が始まる前のインタビューで森山は「物語にかこつけていろんなことを試せるし、新しく作る曲もあれば、行き場がなかった過去の楽曲に光を当てることもできて」「劇場公演のなかで曲と物語がどう交じり合うか、それを楽しんでいるフシもあります」と語っていた。“ナオタリオ”と“森山直太朗”を自然に行き来するこの公演は彼にとって、自ら表現の本質を改めて見つめ直す機会になったはずだ。

 本編が終わった後も、千秋楽らしいサプライズが用意されていた。3回目のカーテンコールの際に、ステージに呼び込まれた御徒町が【あの城】と題された詩を朗読。さらに森山が「スタッフとキャスト、そして、ここに来てくださったみなさま、本当にありがとうございました! いつもステージに上がる前にみんなで『ウ~
、キャッスル!』と掛け声をかけるのですが、最後にみなさんと一緒にやりたいと思います」と挨拶。「キャッスル!」という大きな掛け声、それに続く拍手喝采のなか劇場公演【あの城】は幕を閉じた。

 全国ツアー【絶対、大丈夫】、初主演ドラマ『絶対、大丈夫』、そして、劇場公演【あの城】と15周年イヤーを駆け抜けてきた森山直太朗。本日10月2日は、森山が1stミニアルバム『乾いた唄は魚の餌にちょうどいい』をリリースしたメジャーデビューの日でもある。アニバーサリーイヤーを締めくくり、新しいステージに向かう森山は、次にどんな歌を聴かせてくれるのか? いまからそれが楽しみでしょうがない。

 なお本公演は10月22日20時からWOWOWライブで放送されることが決定している。

TEXT:森朋之
PHOTO:杉能信介