【ラ・ラ・ランド in コンサート】横浜公演オフィシャルレポート到着
【ラ・ラ・ランド in コンサート】横浜公演オフィシャルレポート到着

 人生には叶う夢もあれば、叶わない夢もある…それでも「夢見る」音楽は美しい。

【ラ・ラ・ランド in コンサート】写真(全8枚)

 あの「シネマ・コンサート」に待望の《ラ・ラ・ランド》がやって来た! 巨大スクリーンでの映画上映とフルオケの生演奏が一度に楽しめる夢のハイブリッド・エンタメに、デミアン・チャゼル監督の大ヒット・ミュージカル映画である同作品ほど相応しいものが他にあるだろうか。当日、4千人を超える観客で満員のパシフィコ横浜国立大ホールのステージには、この分野の第一人者である指揮者のエリック・オクスナーと、名門・東京フィルハーモニー交響楽団にジャズ・アンサンブルを加えたスペシャル・オーケストラが登場。劇中で主要な役割を果たすいくつかの主題によって構成された(本企画のために用意されたオリジナル)序曲に続いて、ついに本編がスタートした。

 フレンチ・ミュージカル映画の金字塔《ロシュフォールの恋人たち》の「トランスボドゥール橋」を大渋滞のロスの高速道路でより大胆に再現(※しかもワンカット撮影で!)したかのような冒頭場面から、もう目と耳は釘付け。車から人々が次々に飛び出して〈アナザー・デイ・オブ・サン〉を歌って踊るシーンが、超弩級の臨場感で客席に迫ってくる。場面が終わった段階で既に会場からは大きな拍手が。この企画の素晴らしいところは、このように客席が一体となって上映の途中でも、素直に感動を思いっきり表現できることかもしれない。そして改めて驚くべきは、劇中の台詞や効果音はそのままに、監督の大学時代からの盟友であるジャスティン・ハーウィッツルの書いた(アカデミー賞・作曲賞に輝く)音楽だけが見事にスケールアップしていること。ミア(エマ・ストーン)とセブ(ライアン・ゴズリング)が初めて出会った店で、彼がピアノで奏でた本作のメイン楽曲〈ミアとセバスチャンのテーマ〉の繊細な音色から、再会した二人が夕暮れの街を見下ろすグリフィス・パークの上で繰り広げる(この作品のポスターにも使用されている)魅惑のダンス・シーンを彩る楽曲、セブがミアに熱く「ジャズ愛」を語るライヴハウスで演奏されているビバップまで、そのジャンルは様々。もちろん、薄明の桟橋の上でライアンの物憂げな声で歌われる〈シティ・オブ・スターズ〉と、ブロードウェイ経験もあるエマの熱唱に心を揺さぶられるキラーチューン〈オーディション〉の、共に同賞・主題歌賞ノミネートを果たした(※シティ・オブ・スターズが受賞)ミュージカル・ナンバー2曲のリアルなシンクロ具合も圧巻で、まるで二人がステージに立って歌っているのを聴いているかのような興奮を覚えた(※補足すると、ジョン・レジェンドが作曲を担当した、セブの運命を左右するイマドキな人気バンドの演奏曲〈スタート・ア・ファイア〉さえも見事だった)。

 音楽のグレードが増したことと相まって、随所に往年の名画へのオマージュが散りばめられている場面の美しさや登場人物の心理描写までもがより鮮やかに再現され、恋愛映画として更なる高みに。夢追い人が集まる街を舞台に、恋におちた男女を季節ごとにエピソードを重ねて追い、人生には叶う望みもあれば手に入らない願いもある…だがそれでもなお「夢見る」ことは素晴らしい!と正面切って描いた本作は全ての恋人たちに捧げられた贈り物のような1本。名作《シェルブールの雨傘》にも匹敵する映画史に残る怒濤の〈エピローグ〉を抜け、オーケストラが物語の終局をしっかりと締め括る〈ジ・エンド〉の演奏を終えると、会場は一段と大きな拍手に包まれ、エンド・クレジットの画面と重なっていつまでも鳴り止むことはなかった。


(音楽&映画ライター:東端哲也)


◎公演情報
【ラ・ラ・ランド in コンサート】
名古屋公演
2017年10月3日(火)名古屋国際会議場 センチュリーホール

大阪公演
2017年10月4日(水)フェスティバルホール
http://www.promax.co.jp/lalalandinconcert/