歌い手としての意地と余裕が感じられる、通算6枚目のスタジオ・アルバム / 『テル・ミー・ユー・ラブ・ミー』デミ・ロヴァート(Album Review)
歌い手としての意地と余裕が感じられる、通算6枚目のスタジオ・アルバム / 『テル・ミー・ユー・ラブ・ミー』デミ・ロヴァート(Album Review)

 「Cool For The Summer」やタイトル曲などのヒット曲を輩出した前作『コンフィデント』(2015年)から2年振り、通算6枚目のスタジオ・アルバムとなる『テル・ミー・ユー・ラブ・ミー』(Tell Me You Love Me)を発表した、デミ・ロヴァート。

 2017年7月11日リリースの先行シングル「Sorry Not Sorry」は、主要各国でスマッシュ・ヒットを記録し、全米ソング・チャートでもTOP10入り目前となっている。本作には、この曲と同調のエレクトロ・ポップから、ヒップホップ~トラップ、バラード曲まで、最新のサウンドを取り入れたバラエティ豊かなナンバーが収録されている。プロデューサーには、リアーナやニッキー・ミナージュなどの人気シンガーを手掛けるポップ&オーク、ザ・ウィークエンドやデイヤなどのアルバムに曲を提供したジョナス・ジェバーグ、デミとセレーナ・ゴメスが共演した『プリンセス・プロテクション・プログラム』を担当した、ミッチ・アーラン、そしておなじみのDJマスタード等がクレジットされている。

 日本でも大ヒットを記録した、クリスティーナ・アギレラの2ndアルバム『Stripped』(2002年)からインスピレーションを受けたという本作。そのアギレラを意識したようなパワー・ソング「Tell Me You Love Me」や、高音で歌いあげるミッド・チューン「You Don't Do It For Me Anymore」、3/4拍子のブルース「Cry Baby」など、たしかに感化されたようなナンバーが目立つ。

 一方、妖艶なミッドチューン「Ruin The Friendship」や、中毒性のある「Only Forever」、リル・ウェインが参加したトラップ・バラード「Lonely」など、ボーカルを抑え気味にしたナンバーでは、デミらしさを強調。静と動を上手く使い分けたデミの歌唱が、本作の魅力だ。ファルセットで柔らかい印象を与える「Concentrate」や「Hitchhiker」、80年代ディスコを再現した「Sexy Dirty Love」~「Daddy Issues」など、サウンド面でも強弱がハッキリしていて、聴きやすい。

 パワフルなヴォーカルとキャッチーなポップサウンドでファンを魅了してきたデミだが、本作は売れるアルバムよりも、歌い手としての意地をみせたような印象を受ける。前髪をかきあげ、ナチュラルメイクにランジェリー姿で映る、モノクロのカバー・アートからも、「やり過ぎる必要はない」という余裕すら感じる。アデルの『25』あたりにインスパイアされたのかもしれない。もう「女優兼…」というカタガキは必要ない、アーティストとして確立されたデミ・ロヴァート。本作は、歌手としてのキャリアを代表する、出世作となるだろう。


Text: 本家 一成

◎リリース情報
『テル・ミー・ユー・ラブ・ミー』
デミ・ロヴァート
2017/9/29 RELEASE