フアナ・モリーナ、京都メトロで魅せた、その様子はまさに“ヘイロー(光背・光輪)”
フアナ・モリーナ、京都メトロで魅せた、その様子はまさに“ヘイロー(光背・光輪)”

 「フアナ・モリーナがMETROに来る」そんなニュースが駆け巡ったのは、6月頃のことだったか。約3年半ぶりとなるNEW ALBUM『Halo』リリース後、サマーソニック出演が発表され、東京会場のみかと落胆するも一瞬のこと。同時期に発表された京都での単独公演に、胸を躍らせたファンも多いことだろう。

フアナ・モリーナ ライブ写真(全10枚)

 この日の公演は、言わずもがなSOLD OUT。開場後、入場を待つ長蛇の列。間もなく始まるステージを前に、期待に満ち溢れた人々の顔。入場後も、フアナの登場を今か今かと待つオーディエンスの熱気で、会場の空気は次第に高揚していく。

 場内SEは、rei harakami「lust」。2006年の来日公演で高橋幸宏とrei harakamiがサポートを務めたことを思い出した人も多いはず。ステージ上には、何やら大きなオブジェ…違う、生け花だ。大きな岩の上に活けられた生け花が、舞台上で独特の存在感を放っている。今回の京都公演では、ステージに華道「みささぎ流」家元、片桐功敦の作品が登場。「骨」を思わせる流木のような物体と、鮮やかな色合いの花々、そして手前に長く伸びた尾のような葉。その作品は翼を広げた鳥のようであり、「異形」の何かのようにも見える。

 開演時間を過ぎ、期待を帯びた会場の熱気がピークに高まった頃、客電が落ちる。ワッと沸き起こる歓声。いよいよ開演だ。

 フアナ・モリーナがステージに登場し、ギターを肩にかけ、低音のリフをかき鳴らす。1曲目は「COSOCO」。ミディアムヘアの金髪を揺らし、時折目を伏せながら、メロディを紡ぐフアナ。しなやかで、艶やかなウィスパーボイス。囁くように、それでいて確かに、METROという空間にその存在を刻み付けていく。続く「CARA DE ESPEJO」、繰り出されるリズムと重なる変則的なリフに身を任せ、身体を揺らすオーディエンス。

 曲調に合わせ、揺らめく照明が、フアナと背後の生け花を照らす。その様子はまさに“ヘイロー(光背・光輪)”のようでもあり、フアナがイメージしたという“ひし形のヘイロー(=邪悪な光)”のように見えた。期待と畏怖の念を帯びながら、会場中がフアナの音楽に魅了されていくのがビリビリと伝わってきた。

 NEW ALBUM『Halo』から「ESTALACTICAS」、「PARAGUAYA」と繰り出した後、始まったのは前作『Wed 21』収録の「Eras」。新旧織り混ぜたセットリストに、都度拍手と歓声が沸き起こる。

 今回のステージには、『Halo』のレコーディングにも参加したSchwartz Odin Uriel (Key)とLopez De Arcaute Diego (Dr)が参加。ミニマムな構成ながら、サンプラーを駆使してその場でループを作り、幾層にも重なったコーラスとサウンドで唯一無二の音世界を構築していくパフォーマンスは、神聖な儀式のようであり、実験的行為のようでもある。淡々かつ穏やかな熱を孕んだその演奏に呼応するように、会場のヴォルテージは高まっていった。

 神々しさすら感じるパフォーマンスとは一変し、時折片言の日本語を交えながら、英語とスペイン語でMCをする姿はとてもチャーミング。かつてはコメディエンヌとしても活動していたというフアナ、その素顔が垣間見える度、会場からは和やかな笑みが零れる。

 本編ラストは「Bicho Auto」。ギターを置き、「アリガト、Gracias!Ciao!」と笑顔で手を振りながらステージを降りるフアナとメンバー。鳴り止まぬ拍手と歓声に応え、再びステージに登場。アンコールで披露されたのは「WED 21」。曲の入りを間違え、「ゴメンナサーイ!」と叫ぶ姿はこれまた愛らしく、思わず笑みを浮かべてしまう。あっという間に駆け抜けた約1時間30分ほどのステージ。こんなに時間を忘れてライブに見入ったのは久し振りかもしれない。

 終演後、再び流れ始めるrei harakami「lust」。浮遊感のあるサウンドが、高まった会場の熱気をゆっくりチルアウトしていく。先述の2006年の共演以前、2003年にrei harakamiがアルゼンチンに渡り、フアナと音源を作成したことがあるそうだ。未だ発表されていないその音源を、いつか耳にする機会も切望しつつ。

 さて、チケット争奪戦にもなった今回の公演を見逃してしまった方、落胆すること勿れ。早くも今年の秋、フアナの再来日が決定している。次回のステージは、ビルボードライブ東京・大阪の2会場と東京・Shibuya WWW X、東京・代官山 晴れたら空に豆まいて にて公演を実施。ワールドツアーを経て、より成熟した『Halo』の世界が楽しめることは間違いない。再び日本のファンを魅了するであろう、アルゼンチンの歌姫の再来に、今から期待せずにはいられない。

ステージ装飾 片桐功敦
Photo by 渡邉一生
Text by 杉本ゆかり

◎イベント情報
【晴れ豆インターナショナル presents JUANA MOLINA Japan Tour 2017 京都公演】
2017年8月20日(日)
京都 CLUB METRO

◎今後の来日情報
【フアナ・モリーナ】
ビルボードライブ東京
2017年11月6日(月)
開場17:30 開演19:00

ビルボードライブ大阪
2017年11月10日(金)
開場17:30 開演18:30
詳細:http://www.billboard-live.com/

【ジェフ・ミルズ×テリー・ライリー】
2017年11月7日(火)
【テリー・ライリー×フアナ・モリーナ】
2017年11月8日(水)
【フアナ・モリーナ×ジェフ・ミルズ】
2017年11月9日(木)
東京・Shibuya WWW X
開場 18:30 開演 19:30

【フアナ・モリーナ】
東京・代官山 晴れたら空に豆まいて
2017年11月3日(金・祝)
前売 6,500円(+1d)
開演 1st show 18:00~ / 2nd show 20:00~
詳細:http://mameromantic.com/?p=53994