ポール・マッカートニーの著作権返還訴訟、ソニー/ATV側が訴えの棄却を申し立てる
ポール・マッカートニーの著作権返還訴訟、ソニー/ATV側が訴えの棄却を申し立てる

 2017年1月にポール・マッカートニーがビートルズ時代の楽曲の著作権の返還を求めて、音楽出版会社ソニー/ATV・ミュージック・パブリッシング(SATV)をニューヨークの連邦裁判所に提訴した件で、SATV側が“(機が)熟していない”として訴状をを却下するよう求めていることが分かった。

 マッカートニーの訴訟は、2016年12月にデュラン・デュランがアメリカでの著作権返還を英国の裁判所で求めていたSATVとの法的闘争に敗れたことが発端となった。イギリスの高等法院は、バンドが交わした契約は英国法が適用されるため、著作権に関する米国法よりも契約内容が優先されるとする判決を下した。バンド側は2017年2月に控訴している。

 現地時間2017年3月13日にSATV側より裁判官に提出された文書には、「そもそも、原告からの著作権返還要求に関し、SATVはその有効性を争う陳述はしていない。実際には、有効であると認めているので、この問題に関して論議する必要はない。また、SATVは原告による著作権返還要求が何らかの合意に違反しているとも主張しておらず、今後もそのような主張をすることはないだろう。つまりこの訴状は、(デュラン・デュランの著作権返還訴訟の)結果と、これに付随するかもしれない今後の法的処置によって決まる、架空の要求についての勧告意見を、認められない形で求めている」と記載されている。

 また、「米国の裁判所が英国法の裁定を下す場として適切であると仮定して、今(訴状を)却下すれば、(デュラン・デュラン訴訟の)結果が出るまではする必要がない決定の必要性から免れる上に、もし要求(の機)が熟した場合には英国法では解決されていることになる」とSATV側の弁護士は主張している。

 つまり、現段階では著作権の返還を争うつもりはないとしつつも、「英国人である原告が、英国で支払われる報酬と引き換えに英国で書いた楽曲について、英国の会社と英国で締結した契約」である以上、デュラン・デュラン同様、ビートルズの楽曲に関しても米国ではなく英国の裁判所で判断されるべきだとSATVは主張している。