the GazettE ドキュメンタリー映像作品『the GazettE LIVE TOUR 15-16 DOGMATIC-TROIS-』レビュー 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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the GazettE ドキュメンタリー映像作品『the GazettE LIVE TOUR 15-16 DOGMATIC-TROIS-』レビュー

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the GazettE ドキュメンタリー映像作品『the GazettE LIVE TOUR 15-16 DOGMATIC-TROIS-』レビュー

the GazettE ドキュメンタリー映像作品『the GazettE LIVE TOUR 15-16 DOGMATIC-TROIS-』レビュー

 西洋において「13」という数字が忌避される理由は諸説あるが、かの有名な宗教画に描かれている場面もその内の一つである。広義的な意味での“自然”から学びを受け、様々な分野でその才能を発揮した人物、レオナルド・ダ・ヴィンチによる「最後の晩餐」だ。イエス・キリストの処刑前夜に行われたこの晩餐、そのときテーブルについた人数は弟子を含め13人だった。


 the GazettEが「THE BEGINNING OF OMINOUS YEAR(不吉な年の始まり)」と題されたコンセプトを掲げ、プロジェクト「PROJECT:DARK AGE」を提示したのは2015年3月、バンドが結成13年を迎えた年だった。この不吉な数字はプロジェクト自体にも組み込まれ、ホームページには13本の線から形成されたシンボル・マークが出現。このマークにはイエス・キリストを象徴するかのような1個の中心点「00 : OVERTURE」と、「最後の晩餐」における弟子の数と同じ12個の頂点があるのだが、彼らはこの部分に作品のリリースとツアーの敢行を当てはめながら少しずつプロジェクトを進行させてきた。


 2015年8月には「1st MOV.」としてアルバム『DOGMA』をリリース。タイトルの「ドグマ」とは「宗教の教義」「独断」を意味する言葉だが、その後のツアー・タイトルにはこの形容詞「DOGMATIC(ドグマティック)」が冠された。2016年4月から行われた海外ツアーは【DOGMATIC-trios-】。2017年1月25日にリリースされるドキュメンタリー映像作品『the GazettE LIVE TOUR 15-16 DOGMATIC-TROIS-』は、この海外ツアーにおいて、アメリカ大陸を回った「The Americas」、台湾と中国へ行った「The Far East」、ヨーロッパとロシアを巡った「The Continent」すべての密着映像が収録されている。


 今までリリースされてきた作品の中でも異彩を放つジャケット・アートワークは、アルバム『DOGMA』のそれを浮世絵風に表現したデザインとなっており、アルバムでは磔刑を思わせるポーズをとっていた人物が本作では豪快に海を貪っている。浮世絵の海といえば、江戸時代後半に活躍した葛飾北斎の作品を彷彿とさせるが、彼はレオナルド・ダ・ヴィンチと同様、この世のあらゆる“自然”に対して大きな尊敬の念を抱いていたという。当時、浮世絵は大衆文化として市民に根付いていたため、いわゆる“俗物”という面があったものの、浮世絵を含めた日本芸術は西洋の芸術家にも大きな影響を与えてきた。オランダの画家であるフィンセント・ファン・ゴッホは、自然の中に生きる日本人の教えこそが真の宗教ではないか、ということを自身の手紙に記している。


 一見、the GazettEのようなバンドの作品には似つかわしくないように見えるジャケット・アートワークだが、これは本作にも収められている彼らの宗教性と、ドキュメンタリーであるが故の俗物性とを見事に表現しているように思う。世界各国にいるファンの心酔ぶりを目の当たりにすれば、バンドがある種の宗教として成り立っていることを認めざるを得ないだろう。楽曲やヴィジュアル、コンセプトの高いクオリティへに対する支持をはじめ、日本語の歌詞が多いにも関わらず、その歌詞についての賞賛も聞かれるほどだ。断片的に映し出されるライブの様子も実に熱狂的である。


 もちろん本作の核心はこの裏側にある。華やかな表側だけを見ればすべてが完璧な形で進行していったようにも思えるのだが、海外公演となるとやはり問題も多く発生する。例えば今回、本来「The Americas」で予定されていたアルゼンチン公演は、豪雨によるフライトの欠航で断念せざるを得なかった。次のサンパウロ公演では荷物だけがアルゼンチンに届いてしまったことが発覚するなど、ツアー序盤からトラブル続きである。もちろん日本のように壮大なステージ・セットが組めることもなければ、カナダ・トロントの会場ではノイズに悩まされたりと、設備への不安もしばしばあったようだ。


 ただ、そんな逃れられない現状を把握し受け入れた上で、メンバーとスタッフは丁寧に“ドグマティック”な世界観を作り込んでいく。この過程が興味深い。現場にいるすべての人が「PROJECT:DARK AGE」の一員として対等に話し合う場面からは、彼らがライブ・バンドとして一つひとつの音にこだわっていることが伝わってくるだろう。さらにその裏側には、いわゆる“ミニセグウェイ”に乗ってはしゃいだりと、飾り気のないメンバーの姿も映し出されている。ステージ上にいれば神々しく見える彼らも俗世に生きる人間だ。その上で美学を貫こうとするからこそ、彼らの“ドグマ”は多くの人に受け入れられるのかもしれない。


テキスト:佐藤悠香


◎リリース情報


ドキュメンタリー映像作品『the GazettE LIVE TOUR 15-16 DOGMATIC-TROIS-』
2017/01/25 RELEASE
2017/1/25日(水)Release
<通常盤>DVD
SRBL- 1736 / 5,556円(tax out.)
<通常盤>Blu-ray
SRXL-118 / 6,481円(tax out.)


バラードベストアルバム『TRACES VOL.2』
2017/03/08 RELEASE
<初回限定盤>
SRCL-9336 3,611円(tax out.)
<通常盤>
SRCL-9337 3,056円(tax out.)


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