桑田佳祐 生涯懸けて音楽の可能性を切り開くスター「皆さんのおかげでここに立っていられます」笑いと感涙に溢れた【悪戯な年の瀬】 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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桑田佳祐 生涯懸けて音楽の可能性を切り開くスター「皆さんのおかげでここに立っていられます」笑いと感涙に溢れた【悪戯な年の瀬】

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桑田佳祐 生涯懸けて音楽の可能性を切り開くスター「皆さんのおかげでここに立っていられます」笑いと感涙に溢れた【悪戯な年の瀬】

桑田佳祐 生涯懸けて音楽の可能性を切り開くスター「皆さんのおかげでここに立っていられます」笑いと感涙に溢れた【悪戯な年の瀬】

 2016年12月27日、28日 30日、31日の4日間、桑田佳祐が横浜アリーナにて【年越しライブ 2016「ヨシ子さんへの手紙 ~悪戯な年の瀬~」】を開催した。

桑田佳祐 年越しライブ写真など


<自由すぎる桑田節炸裂「皆さんのおかげでここに立っていられます」>


 ソロ名義としては4年ぶりとなった年越しライブ、今回も例年通り横浜アリーナ4daysでの公演となった。当編集部は初日を取材。公演は広末涼子主演「悪戯されて」の切ない“歌謡サスペンスビデオ”と合わせて「悪戯されて」からスタート。クールファイブを彷彿とさせるコーラス隊も携えて、前川清を思わせる節回しも織り交ぜながら、さらには「横浜アリーナで 皆で集まれば 来年も幸せが来るだろう♪」と粋な替え歌まで繰り広げながら、冒頭から【悪戯な年の瀬】というタイトルに相応しいユーモラスかつハートフルな歌謡ショーを展開していく。その後も「本当は怖い愛とロマンス」でセクシーなショーガールに悪戯しようとして逆に股間を攻撃されたり、「悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)」が流れ出せば自然と美しいシンガロングが響き渡ったり、ステージバックのオーディエンスたちを「あなたたちは背景だから、背景(笑)」とイジったり、遊び心満載で自由度の高いライブスタイルは終始一貫されていた。


 「皆さん、いらっしゃいませー! 横浜アリーナに帰って参りましたー! ありがとうございます、皆さんのおかげでここに立っていられます。今年も充実した楽しい1年でしたけど、皆さんもいろいろあったでしょ? 最近は私なんかの世代は「孫が出来た」とかね、『そして父になる』じゃなくて『そして墓を買う』とかね、そういう状況になってきてますが、ミック・ジャガーが73で子供をつくりました。もう訳がわかりません!(客席から「がんばれよー!」と声援)いや、がんばれよと言われてもね(笑)」MCも自由すぎる桑田佳祐。次から次へと繰り出されるキラーフレーズ(?)に会場は笑いに包まれ続ける。「今日は初日なんでね、いちばん元気が良いんです! 後ろの背景の皆さんのところにも後で行くからさ、物投げないでよ!? 最後までよろしくお願いしまーす!」


<還暦迎えて初のライブでキャリアハイ それを支えるバンドメンバーたち>


 そして、1994年リリースの大ヒットアルバム『孤独の太陽』収録曲3連発から「東京ジプシー・ローズ」。さらには、激しく軽やかに背中をどんどん押してくる「それ行けベイビー!!」や「現在(いま)がどんなにやるせなくても 明日は今日より素晴らしい」と熱く歌い切る「月光の聖者達(ミスター・ムーンライト)」など2010年のアルバム『MUSICMAN』より、泣ける楽曲群も連発。還暦を迎えて初めてのライブがこの日だったとのことだが、60歳のアーティストがこのタイミングでキャリアハイを感じさせるライブが出来てしまっている事実は、何よりも衝撃的であった。そんな桑田佳祐のステージを支えるメンバー紹介。「今、日本でいちばん忙しいドラマー」河村“カースケ”智康(dr)、「葉加瀬太郎さんと一緒にやられている、顔に“信頼”と書いてある」竹下欣伸(b)、「いつも一緒にやってもらっています、素晴らしいサキソフォン」山本拓夫(sax)、「引っ張りだこの、最高のトランペッター」西村浩二(trumpet)、「いつもお世話になっている……よっ天然!」片山敦夫(key)、「こちらもほぼ天然でございます。67歳」深町栄(key)、桑田から「憧れの濃い顔」といじられ「こう見えても私たち、本当は日本人♪」と見事なコーラスワークで答えたTiger(cho)&佐藤嘉風(cho)、そして自己紹介代わりに難解なギターソロを披露して「死ぬかと思った。スベった、スベった」と慌てていた斎藤誠(g)と、日本を代表する名うてのミュージシャン達が紹介されていったのが、この錚々たる面々が桑田佳祐と共にいると実にコミカルなファミリーと化すのも面白かった。鳴らしている音は最強だが、ノリは放課後の学校のような感覚という、ならではの空気がここには流れている。


<ビキニ美女やらお相撲さんやら……いまだかつて体感した事のない世界>


 そんなバンドメンバーと、数多くのダンサーたち、そして映像演出と共に総合エンターテインメントを繰り広げていく桑田佳祐。フラダンサーを従えての「愛のプレリュード」、渋谷駅バスロータリーの映像と共に「大河の一滴」、ミニスカおねーちゃんが踊りまわる「あなたの夢を見ています」、ミラーボールの光が会場を照らす中での「傷だらけの天使」、サプライズで名曲「恋人も濡れる街角」をワンフレーズ歌ってからの「Yin Yang(イヤン)」、事前にお客さんひとりひとりに渡されていた腕輪が一斉に光り出す「君への手紙」等々、すべての楽曲において全く異なる世界観を演出していく流れは贅沢で、まるで連続的に良質なショートムービーを堪能しているような感覚。特に2016年を代表するスタンダードナンバーとして聴き継がれていくであろう「君への手紙」は、その憂いを帯びたアコースティックロッカバラードの音色が年の瀬のムードと相まって胸に染み渡り、そして「サヨナラと出逢いの繰り返し ひとり 夢追って 調子こいて こんな男のために 小粋なバカが集まったな」等の哀愁とロマンティシズム溢れるフレーズたちが聴き手の人生とも重なり、涙を誘う。桑田佳祐の歌はすべてがドラマであり、そして我々の人生でもあることに曲を追うごとに気付かされていく夜だった。


 そして終盤「真夜中のダンディー」「ROCK AND ROLL HERO」と胸に沁みる超キラーチューンが畳み掛けられ、そこへ特効や巨大風船やビキニ姿の美女と共に「波乗りジョニー」、さらにレーザービームや炎や全身タイツのもじもじくんと「EARLY IN THE MORNING ~旅立ちの朝~」がお届けされ、色気あるエプロン女子たちとの絡みの果てに「家族になろうよ(笑)」発言まで投下。極めつけは、30名ものダンサーやお相撲さんや謎の女性=ヨシ子さんと共に披露した「ヨシ子さん」だが、世界観が日本なんだかインドなんだか多国籍過ぎてカオティック。そんな摩訶不思議さの中で「ニッポンの男達(メンズ)よ ヤっちゃえ ほい」とメンズとして励まされもするという、どさくさに紛れて勇気ももらえちゃうという、いまだかつて体感した事のない世界がそこには広がっていた。「ヨシ子さん」も2016年の桑田佳祐を代表するナンバーだが、時に「“サブスクリプション”まるで分かんねぇ“ナガオカ針”しか記憶にねぇよ」や「「ブラックスター」でボウイさんが別れを告げた」など突き刺さるフレーズを織り込みながらも、徹底的に遊び尽くされたサウンドアプローチでいまだかつて味わったことのないグルーヴでオーディエンスを踊らせてみせる、実験的でありながらニガさを感じさせないどころか聴き手をハッピーにしてみせる同曲は、ボウイがそうであったように桑田佳祐も生涯かけて音楽の可能性を切り開いていく存在である。ということを改めて認識させた1曲であり、そんな歴史的ナンバーで年の瀬に大騒ぎできたのは実に有意義な体験であった。


<「今年も1年ありがとうございました! また来年お会いしましょう!」>


 15,000人からの鳴り止まぬ歓声とハンドクラップ。ステージへ再び現れた桑田佳祐は「幸せのラストダンス」を皮切りに、年越しライブに相応しい名曲たちを用意していた。「白い恋人達」のイントロダクションが流れ出せば、前述の約束「後ろの背景の皆さんのところにも後で行くからさ、物投げないでよ!?」を果たす為にステージバックへと飛び込んでいき、年の瀬感200%のせつなくて恋しくて涙してしまうバラードをエモーショナルに歌い上げていく。そして、最後の最後に披露した「祭りのあと」。先ほど桑田佳祐の歌は我々の人生でもあると記したが、例えば「フラれてもくじけちゃ駄目だよ」、例えば「野暮でイナたい人生を 照れることなく語ろう 悪さしながら男なら 粋で優しい馬鹿でいろ」、例えば「底無しの海に沈めた愛もある」「悲しみの果てにおぼえた歌もある」といったフレーズたちが多幸感溢れるサウンド&シチュエーションの中でガシガシ突き刺さってくる。それに加えて間奏で放たれる「ありがとね!」「みんな、よいお年を!」といった人情味溢れる声。これで涙を流すなというほうがムリな話だ。


 「どうも皆さん、今年も1年ありがとうございました! また来年お会いしましょう! ありがとう! また来年ね!」2016年12月27日、28日 30日、31日の4日間、横浜アリーナにて行われた【年越しライブ 2016「ヨシ子さんへの手紙 ~悪戯な年の瀬~」】。そこに居合わせた誰もがこう思ったことだろう。「いろいろあったけど、良い1年だった。おかげで来年も頑張れそうだ」と。そして「2017年もまた桑田佳祐と逢いたい」と。歌に人が励まされる関係性が生まれてからどれだけ経ったのか分からないが、ここまで我々のロマンも色恋も侘しさも全部全部歌にしてくれて、いつだってフランクに笑わせたり鼓舞させたりしてくれる還暦越えのスーパースターは他にいないだろう。そんな桑田佳祐が2017年、どんな音楽で僕らを楽しませてくれるのか。今から楽しみで仕方ない。


取材&テキスト:平賀哲雄
写真:岸田哲平


◎ライブ【年越しライブ 2016「ヨシ子さんへの手紙 ~悪戯な年の瀬~」】
12月27日(火)横浜アリーナ セットリスト:
00.悪戯されて
01.ダーリン
02.本当は怖い愛とロマンス
03.悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)
04.鏡
05.飛べないモスキート(MOSQUITO)
06.エロスで殺して(ROCK ON)
07.東京ジプシー・ローズ
08.SO WHAT?
09.それ行けベイビー!!
10.月光の聖者達(ミスター・ムーンライト)
11.愛のプレリュード
12.大河の一滴
13.あなたの夢を見ています
14.傷だらけの天使
15.Yin Yang(イヤン)
16.メンチカツ・ブルース
17.風の詩を聴かせて
18.JOURNEY
19.君への手紙
20.真夜中のダンディー
21.ROCK AND ROLL HERO
22.波乗りジョニー
23.EARLY IN THE MORNING ~旅立ちの朝~
24.ヨシ子さん
EN1.幸せのラストダンス
EN2.白い恋人達
EN3.祭りのあと


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