2016年のラップ・アルバム大本命、J.コール『4・ユア・アイズ・オンリー』(Album Review)
2016年のラップ・アルバム大本命、J.コール『4・ユア・アイズ・オンリー』(Album Review)

 2016年12月31日付の米ビルボード・アルバム・チャート(12月31日付)で、堂々のNo.1デビューを果たした、米ノースキャロライナ州出身のラッパー、J.コールの4thアルバム『4・ユア・アイズ・オンリー』。驚くべきは、50万枚近い初動枚数を叩き出したということ。2016年では、4月にリリースされた、ドレイクの『ヴューズ』(104万枚)、ビヨンセの『レモネード』(65万枚)に続く高セールスで、J.コールというアーティストの、人気の高さを物語った。

 J.コールは、これまでリリースした3枚のアルバム、1st『コール・ワールド:ザ・サイドライン・ストーリー』(2011年)、2nd『ボーン・シナー』(2011年)、3rd『2014フォレスト・ヒルズ・ドライヴ』(2014年)、全てのアルバムが首位を獲得していて、本作『4・ユア・アイズ・オンリー』で、4作全てが首位を獲得し、同時に、R&Bチャート、ラップ・チャートの3冠を、4作連続で制覇したことになる。
 
 全10曲、コンパクトにまとめた『4・ユア・アイズ・オンリー』。ただむやみに、新曲を詰め込むということはせず、厳選された楽曲のみが収録されているあたり、本作への強い拘りが感じられる。そして、“ゲスト”で売ろうとする姑息な手も使わない。本作に収録された10曲全て、フィーチャリング・アーティストはクレジットされていないのだ。これも、楽曲そのものに、自信があるからだろう。

 プロデュース/制作陣には、ジェイダキスやDMX等、人気ラッパーのヒット曲を手掛けたエリートや、ドレイクの「ベスト・アイ・エヴァー・ハッド」(2009年)、エミネムの「ノット・アフレイド」(2010年)、そして今年、9週のNo.1をマークした、リアーナの「ワーク」などを手掛けた、ボーイ・ワンダ、そのリアーナやケンドリック・ラマー、トラヴィス・スコット等の最新作を手掛けた、フランク・デュークスなど、昨今のヒップホップ・シーンには欠かせない、売れっ子プロデューサーたちが参加している。

 冒頭の「フォー・フーム・ザ・ベル・トールズ」から、ラストを飾るタイトル曲まで、10曲全てが「これぞ、ヒップホップ」と唸らせる、ストリート感覚を持ち合わせた、クールな仕上がり。若層向きの、フロアライクなラップ・アルバムというよりは、90年代にフロアに通い詰めた、アラフォー世代の方々が、グっとくるアルバムだと思う。当時活躍していた、東海岸のアーティストを彷彿させる音に、J・コールのルーツを伺わせる。

 リリース日の関係で、2017年2月に開催される【第59回グラミー賞】にはノミネートされなかったが、2016年のラップ・アルバム大本命といっても過言ではない、完成度の高いアルバム『4・ユア・アイズ・オンリー』。しばらく、いい音楽(アルバム)に出会えていないという方は、是非聴いていただきたい。


Text: 本家 一成

◎リリース情報
『4・ユア・アイズ・オンリー』
J.コール
2016/12/9 RELEASE
https://goo.gl/cE9sWS