岸田繁(くるり)による初の交響曲初演レポート、「この曲はソウルミュージック」
岸田繁(くるり)による初の交響曲初演レポート、「この曲はソウルミュージック」

 岸田繁(くるり)による【交響曲第一番 初演】の東京公演が、12月6日に開催された。会場はオペラシティ コンサートホール。岸田が約7年前にウィーンフィルの演奏を聴き、大きな衝撃を受けた楽友協会ホールを彷彿とさせるシューボックス型のホールだ。

 本作は、京都市交響楽団の柴田マネージャーからオーケストラ作品の書き下ろしを依頼され、およそ2年越しで誕生。京都公演、東京公演ともにチケットは完売し、場内は岸田ファンや、クラシックファンらで満席に埋め尽くされた。京都市交響楽団と指揮の広上淳一が登場すると、髪を短く切り黒のスーツ姿に身を固めた岸田が登場。普段とあまりにも違う装いに会場には、思わずどよめきが起こった。岸田もステージ脇に着席すると、1曲目「Quruliの主題による狂詩曲」がスタート。本作は、I.幻想曲、II.名も無き作曲家の少年、III.無垢な軍隊、IV.京都音楽博覧会のためのカヴァティーナの4楽章で構成されたラプソディーで、「ワンダーフォーゲル」や「ばらの花」、「虹」など、くるりの代表曲の旋律が散りばめられ、新たな作品として生まれ変わった。3楽章が終わると、ステージ中央に岸田が登場。4楽章は「宿はなし」のオーケストラアレンジで、広上の鍵盤ハーモニカとともに岸田の真っ直ぐな歌声がホールを満たした。

 休憩を挟み、後半は「交響曲 第一番」。岸田にとって初の交響曲であるにも関わらず、全5楽章、約50分の大作だ。「一体どんな音楽が始まるのだろう」と観客全員が固唾をのんで見守る中、少し不穏な和声からスタート。形式は交響曲でありながら、それぞれの楽章に岸田の個性が詰まった主題が登場し、ロックやクラシックといったジャンルの垣根を越えた自由な音楽に圧倒された。最後の音が消え、静けさが戻ると客席からは大きな拍手が。観客とともに演奏を見守っていた岸田もステージに再び登場し、観客やスタッフへの御礼の言葉を述べた。緊張気味の岸田をほぐすように、広上が客席に向かって「岸田さんのサウンドをオーケストラで演奏したら、こんな感じになりました。みなさん、いかがでしたか?」と問いかけると、客席からは再び大きな拍手。岸田は「作曲していて、魂が一音一音に入っていくような感じがしました。ジャンルの話じゃないけど、この曲はソウルミュージックだと思います。(このソウルミュージックに)広上先生、京都市交響楽団、(編曲家の)三浦秀秋君が魂を入れてくれました。お誕生日おめでとう」と、生まれたばかりの交響曲の誕生を観客とともに祝った。アンコールは、「管弦楽のためのシチリア風舞曲」と、前半でも演奏した「Quruliの主題による狂詩曲」の4楽章。鳴り止まない拍手にカーテンコールは何度も続き、岸田が「ほんまに、この瞬間を共有できて幸せです。ありがとうございました」と再度 御礼を述べ、幕を閉じた。岸田繁作曲「交響曲第一番」は、2017年春にCD化が予定されている。