化学反応を外して…ジャック・ホワイトの素顔が浮かび上がる『アコースティック・レコーディングス』(Album Review) 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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化学反応を外して…ジャック・ホワイトの素顔が浮かび上がる『アコースティック・レコーディングス』(Album Review)

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化学反応を外して…ジャック・ホワイトの素顔が浮かび上がる『アコースティック・レコーディングス』(Album Review)

化学反応を外して…ジャック・ホワイトの素顔が浮かび上がる『アコースティック・レコーディングス』(Album Review)

 ジャック・ホワイトが今秋リリースした『アコースティック・レコーディングス 1998-2016』は、表題どおりにザ・ホワイト・ストライプスからザ・ラカンターズ、そして2010年代のソロといった彼のアーティスト・キャリアから、アコースティックという切り口で楽曲をセレクトしたコンピレーション作品だ。アコースティック作品としての性格を引き出すための新ミックスが施された楽曲もあり、リード作品として「Love is the Truth (Acoustic Mix)」(ジャック・ホワイト)と「City Lights」(ザ・ホワイト・ストライプス未発表曲)の両A面7インチもリリースされていた。


 今回のアルバムから浮かび上がってくるのは、もちろんジャック・ホワイトのソングライター/プレイヤーとしての個人の素顔であり、存在感だ。ただし、彼の表現キャリアにおいて“ジャック・ホワイト個人”が最も重要な部分を担っていたかというと、そうではないように思える。ホワイト・ストライプスではメグ・ホワイトとの歪でスリリングでロマンチックな2ピースの呼吸が重要であったし、ラカンターズやデッド・ウェザーには強烈な個性が顔を並べるスーパーグループとしての側面があった。そしてそれは、ソロ名義活動のこだわり抜いたバンド編成でも同様である。


 ジャック・ホワイトは、いつでもハミ出るような才能を感じさせる個人でありながら、一方で個人では辿り着くことの出来ないスペシャルな瞬間の音を求め、作品に残してきた。アコギのソロ弾き語り曲「We’re Going to Be Friends」は最も極端な例だが、ソファの上、ジャックの傍に寝転がって楽曲に耳を傾けるメグの姿を捉えたあのミュージック・ビデオのシチュエーションこそが、楽曲の化学反応の本質を成す部分なのである。


 ブルースやフォークに深い造詣を持つジャックならば、アコースティック演奏の魅力を伝えることはさほど難しいことではないし、驚くべきことでもない。何しろ、未発表曲は含まれるものの、過去作のコンピレーションだ。ただこのアルバムにはやはり、人との距離感、テクノロジーとの距離感、そして時代との距離感を音楽に込めてきたジャックならではの、リリースの必然があるのだと思う。


 レーベル運営者として、アナログ作品としての質感にこだわった部分もあるだろうし、手の込んだプロダクションとは真逆のシンプルな構成で、創作活動の魅力を伝えたかったという狙いがあったのかも知れない。ディスク2の後半、別ミックスで届けられるソロ名義作品の数々は、眩暈のするような美しさだ。Billboard 200では初登場8位、アナログのアルバム・チャートでは堂々の1位。ジャックの見込みどおりに成果を挙げることが出来たと言えるだろう。(小池宏和)


◎リリース情報
『ジャック・ホワイト アコースティック・レコーディングス 1998-2016』
2016/9/26 RELEASE
SICP-30856~7 2,800円(tax out.)


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