清らかで神々しい、世界最高の白鳥の騎士フォークト 新国立劇場『ローエングリン』に4年振りの降臨
清らかで神々しい、世界最高の白鳥の騎士フォークト 新国立劇場『ローエングリン』に4年振りの降臨

 新国立劇場で5月23日からワーグナー作曲『ローエングリン』が好評上演中だ。2012年にその神々しい美声と佇まいで“理想のローエングリン”を体現し熱狂を巻き起こした、世界的ヘルデン・テノールのクラウス・フロリアン・フォークトが再来日している。

 中世の聖杯騎士伝説を背景に、ドイツの歴史的ターニングポイントに神秘的な奇跡と人間のエゴが交錯するこの物語は、決して希望を感じるエンディングではないにも関わらず、その音楽は第1幕序曲から悲劇的結末を迎える3幕まで、哀しいまでに幻想的で崇高な美しさに満ちている。

 タイトルロールには世界最高峰のローエングリン歌いであるフォークトを2012年と同様迎えている。清らかで徳が高く、そして女として重い試練を受けるエルザ役にはマヌエラ・ウールが来日。近年ワーグナー、R.シュトラウス作品で脚光を浴びている。オルトルート役はバイロイト音楽祭などで長年に渡って活躍するペトラ・ラングがつとめ、1幕はほぼ黙役であるにも関わらず、そのゾッとする程の演技力で2幕から圧倒的存在感を放った。テルラムント役には昨シーズンの新国立劇場『ばらの騎士』オックス男爵でも好評を博したユルゲン・リンが登場。

 シュテークマン演出、ロザリエ美術・衣裳による光が移ろい彩るモダンなプロダクションも2012年に好評を博したもの。指揮はワーグナー作品を得意とする飯守泰次郎芸術監督が務めている。力ある者に翻弄される一方で、力強く物語を導いていく“民衆たち”を演じる、新国立劇場合唱団の存在感にも注目だ。6月4日マチネ公演が千秋楽。世界的に豪華な布陣となっている今回の『ローエングリン』を見逃さないようにしたい。

text:yokano 撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場

◎公演概要
2015/2016シーズン
リヒャルト・ワーグナー作曲
オペラ「ローエングリン」全3幕<ドイツ語上演 / 字幕付>
新国立劇場オペラパレス

2016年05月23日 17:00開演
2016年05月26日 14:00開演
2016年05月29日 14:00開演
2016年06月01日 17:00開演
2016年06月04日 14:00開演

公式サイト
http://goo.gl/RTxC4U