チキパ 物語性と音楽性が隆起した現体制最後の快作「ラストシングルのつもりで全て出し切って」(Album Review)
チキパ 物語性と音楽性が隆起した現体制最後の快作「ラストシングルのつもりで全て出し切って」(Album Review)

 ラストシングルのつもりで全てを出し切って欲しい。制作にあたりディレクターは、各作詞家や作曲家、アレンジャーにそう伝えたという。結成から4年半、一度もメンバーチェンジすることなく活動してきたCheeky Paradeは、LA留学する山本真凜と鈴木真梨耶がチームを離れることになった。現体制の9人としては最後の作品、それが6月1日リリースの2ndフルアルバム『Cheeky Parade II』だ。


 本作は4周年ライブの模様をメンバーの解説付きで収めたBlu-rayを同梱したType“M”と、CDのみのType“W”の2形態でリリース。Blu-rayには、9人のストーリーを白光で表現した感動的な「WE ARE THE GREATEST NINE9’」ミュージックビデオのCLOSE UP ver.も収録。また、各形態のCDは曲順や一部収録曲が異なり、Type”M”は物語性が強調された作風になっているため、Blu-rayと合わせて古くからのファンにオススメのアイテムといえるだろう。

 一方のType“W”は、作品性の高さが特徴だ。中でも中盤、Type“W”にのみ収録された新曲「SUPER STAR」からの畳みかけは大きな聴きどころ。同曲は水樹奈々やPASSPO☆にも楽曲提供する宇佐美宏が作編曲を担当し、ハネたビートに壮麗な装飾を施したサウンドとグッドメロディで華やかな彩りを与えた。

 さらに、続く新曲「Happy Fancy Music」は、アグレッシブな音色を丁寧に折り重ねた攻めのサウンドが耳に楽しい。作編曲を手がけたHIKIEは、宇佐美と同じく結成時からチキパに深く関わるクリエイターだが、その後もヒゲドライバーや木之下慶行、上村伸太郎らチキパを支えてきた人気作家陣が、それぞれに意欲的なアプローチで9人の新たな門出に華を添えている。


 また、チキパではお馴染みの作詞家 RESiA209が少女たちの物語を情感あふれる言葉で紡いだ「WE ARE THE GREATEST NINE9’」をはじめ、各曲の歌詞には一貫して、続いていく未来や彼方にきらめく夢への言葉が並ぶ。常に楽曲やライブと真摯に向き合ってきた9人を総括した時、湿っぽさよりも力強さが際立ったのは“ライブが命”を標榜するチキパらしい所だ。

 最近を例に出すなら、現体制ラストと言われてきた6月のイベント開催直後にフランスの【JAPAN EXPO 2016】に今の9人で出演することが決定する……みたいな悲喜こもごもともしばしば対峙し、ぶつかりながら闘ってきた4年半の軌跡。主観と俯瞰でそれぞれ楽しめる2種類が用意された快作『Cheeky Parade II』に、今は素直に「これぞチキパだ!」と喝采を送りたい。


Text:杉岡祐樹

◎アルバム『Cheeky Parade II』
2016/06/01 RELEASE
[(CD+Blu-ray盤)Type“M”]
AVCD-39267/B 6480円(税込)
[(CDアルバム盤)Type“W”]
AVCD-39268 3000円(税込)