ピアニスト上原彩子インタビュー、「2人の作曲家を通してロシアの混沌とした雰囲気を感じて」
ピアニスト上原彩子インタビュー、「2人の作曲家を通してロシアの混沌とした雰囲気を感じて」

 第12回チャイコフスキー国際コンクール ピアノ部門で、女性として史上初、日本人としてもピアノ部門では初めての1位を獲得し、小澤征爾、シャルル・デュトワ、ワレリー・ゲルギエフなど国内外の指揮者やオーケストラと共演するなど幅広く活躍する上原彩子。6月3日には、【上原彩子 プレリュードを弾く】というタイトルで、ラフマニノフとスクリャービンの前奏曲のコンサートを開催する。

 上原は、今回のプログラムについて「ラフマニノフとスクリャービンは、年齢は1歳差で同じ先生に習っていたほど近しい関係です。同じ時代に生きた2人の作曲家の前奏曲を並べることで、共通点や違う点が浮かび上がって面白いのではと」と紹介。そして、両作曲家について「ラフマニノフの音楽は、和音がずっしりしていて、どんどん根が下に伸びていくようなイメージ。スクリャービンは、弾いていると音が飛翔していくような感じがします。世界大戦が起こる直前の1900年前後というロシアの混沌とした雰囲気を、2人の作曲家の目から見たものを通して、より多角的に感じていただければ」と続けた。

 今回演奏するラフマニノフの作品は「前奏曲「鐘」」、「10の前奏曲より第4番、5番、6番、7番」、「13の前奏曲」の3作品だ。「「鐘」と「10の前奏曲」というのは、比較的若い頃に作られた作品なので曲を通じて、生きる喜びが感じられますが、「13の前奏曲」からは死のイメージが伝わってきます。ラフマニノフの作品は楽曲を通じて、人生経験が伝わってくるのも魅力の1つですね」

 上原は、現在3児の母として家事や子育てをしながら、演奏活動を続けている。バレエを習っている子供達にせがまれて、自宅でチャイコフスキーのバレエ音楽を弾くこともあるという。「ラヴェルの「ラ・ヴァルス」や、シベリウスの「ヴァイオリン協奏曲」、ストラヴィンスキーの「春の祭典」のように、リズムやアクセントが特徴的な作品が好きみたいです。どれも和音や旋律が難しい気がしますが、子供にとってはリズムが楽しければ、和音は関係ないようで、勝手に振りつけを考えて家で踊っています。そんな子供達の踊りを見るのは、私にとっても幸せな時間です」

 3人の子育てと演奏活動の両立は、さぞかし大変だろうと思いきや、寝る時間が減るよりピアノを弾かない方が、よっぽどストレスだと上原は笑った。「出産直後に、何カ月かピアノを弾けない日が続いたんですが、それがとてもストレスで。私にとってピアノは自分の一部なので、弾かないというのは自分を表現できないということ。集中してピアノの練習をして、子供が帰ってきたらピアノのことは忘れて一緒に遊ぶというのが、今の私にとってちょうど良いバランスです。近くに住んでいる義母と母の多大なサポートで演奏活動を続けることができて、とても感謝しています」 文:高嶋直子 写真:三浦興一

◎Apple Music プレイリスト「上原彩子にインタビュー」
applemusic.com/billboard-japan

◎公演情報【上原彩子 プレリュードを弾く】
日時:2016年6月3日(金)19時開演
会場:オペラシティ コンサートホール
出演:上原彩子
お問合せ:ジャパン・アーツぴあ Tel.03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp/