Album Review:アンダーソン・パーク『マリブ』 メジャーとアンダーグラウンドを自由に行き来するマルチな才能が示す底知れぬポテンシャル
Album Review:アンダーソン・パーク『マリブ』 メジャーとアンダーグラウンドを自由に行き来するマルチな才能が示す底知れぬポテンシャル

 昨年、ドクター・ドレーによる久々のアルバム『Compton』において、多数の楽曲にフィーチャーされ大活躍を見せていた、ラッパー/シンガーソングライターのアンダーソン・パーク。そんな彼が、この1月にニュー・アルバム『Malibu』をリリースした。ネオ・ソウルの息遣いと美しいコーラス、アンダーグラウンド・ビートのジャジー&スモーキーなグルーヴ、トロピカルなテイストやディスコ・チューンまでが詰め込まれた、濃密さの中でポテンシャルの高さを伝える一枚である。

 アンダーソン・パークは、カリフォルニア南部の町オックスナード生まれの29歳。突然仕事を解雇され妻子と共に路頭に迷っていたところを、サーラー・クリエイティヴ・パートナーズのシャフィークに助けられ、アシスタントとして働きながら多くのことを学んだという。その時期にはブリージー・ラヴジョイ名義で活動、リリースも行った。2014年にはアンダーソン・パーク名義で、エレクトロ/トラップ色の強いアルバム『Venice』を発表している。

 新作『Malibu』のテイストは到底一口には語り得ないものだが、オープニングを飾るメロウなラップ・ソウル・チューン「The Bird」をアンダーソン・パーク自身がプロデュースしているところに、彼の舵取りの確かさが伺える。その後次々に登場するプロデューサー陣の顔ぶれが豪華で、50セントやエミネムなどアフターマス関連作品を手がけてきたDJカリル、「The Water」で鋭利なビートと美しく幻惑的なサウンドの中に誘うマッドリブ、ヒップホップのクールなビートを象徴するような多作家・9thワンダー、そして先頃、ビルボードライヴで来日公演を行ったばかりのスーパードラマー/プロデューサー=クリス・デイヴetc.といった具合である。

 ヴォーカルのゲストにも、スクールボーイ・Qやザ・ゲーム、タリブ・クウェリといったビッグ・ネームが招かれており、アンダーソン・パークは本作でさながら、メジャー/インディーのヒップホップ・シーンを橋渡しするキーマンのような存在感を振りまいている。2015年末にはノリッジとのユニット=ノーウォーリーズ(Nxworries)として名門インディーのストーンズ・スロウから『Link Up & Suede EP』をリリースしていたが、本作『Malibu』も以前と同様、地元のローカル・レーベルからのリリースだ。メジャーとインディーを自由に行き来し、マルチな才能で人々を惹きつける。それこそが、アンダーソン・パークの底知れない魅力なのかも知れない。

[Text:小池宏和]

◎リリース情報
『マリブ』
2016/01/27 RELEASE
Steel Wool/Empire
ERECDJ218 2,300円(tax in.)