Salyu×小林武史による【“minima”-ミニマ-】最新公演開催 レポート到着
Salyu×小林武史による【“minima”-ミニマ-】最新公演開催 レポート到着

 Salyuと小林武史が濃密なセッションを重ねるライブシリーズ【“minima”-ミニマ-】の1年半ぶりの公演となる【a brand new concert issue “minima”- ミニマ - Salyu × 小林武史 - session 1 -】が、12月7日、10日 下北沢GARDENにて開催。10日公演のライブレポートが到着した。

<“minima”シリーズの発展=無限に広がる Salyu の音楽宇宙があらわになった一夜>

 Salyu自身も「ワンマンでスタンディングなんて何年ぶりだろう?」とオーディエンスとの距離の近さに喜びを隠せない様子だった。ライブのタイトルからもわかるように、この公演は“minima”シリーズの新局面の始まりを告げるものであり、“session”がキーワードになっている。Salyuと小林武史に加えて、今回はあらきゆうこ(dr)が招かれた。Salyuという天賦の才を持ったボーカリストが追求する、比類なきポップミュージックの極意。そこに無限の音楽的な可能性が広がっていく瞬間を、ミニマムな編成によってオーディエンスとともに体感する“minima”のあらたなる妙趣は、1曲目の「emergency sign」を皮切りに、鮮明な輪郭をもってあきらかになった。

 軽重や剛柔を自在に操るドラミングで、グルーヴの根底を支えるあらき。キーボードで音像をコントロールする小林は、ピアノやシンセのフレーズのみならず左手でベースラインも弾いてみせる。そして、万能感とすごみに富んだSalyuのボーカル力である。広い音域と多彩な旋律を天衣無縫に紡いでいくSalyuのボーカルは、シリアスなムードが流れる楽曲ではフロアを心地いい緊張感で満たし、光量の高い楽曲では解放のカタルシスを生むように躍動した。また、Salyuは「エロティック」ではサンプラーとパッドを駆使しサウンドにスパイスをまぶし、「landmark」ではルーパーを使用し自らの声をその場で重ね、神秘的なコーラスを構築した。こういったアプローチは、“salyu × salyu”の経験と方法論を昇華したものとも言えるだろう。

 ポストロックやエレクトロニカ、あるいはミニマルミュージックや現代音楽にも通じるサウンドスケープを展開しながら、最新アルバム『Android & Human Being』からLily Chou-Chou名義の楽曲まで幅広くかつレアなセットリストを染め上げた全16曲。

 「これは、前から密かにやりたかった試みなんです。フルバンドのアンサンブルも楽しいんだけど、ここまでシンプルな編成で、ときに暴力的なまでに自由自在のライブをやる。これは、なかなか楽しいですよ。」MCで小林はこのように語っていたが、“minima” の“session”シリーズは、今回を機にさまざまなトライアルを実施していくだろう。そして、そこで浮き彫りになるのは、Salyuと小林が切り拓くポップミュージックの革新的な地平に違いない。日本のポピュラーミュージックシーンにおける至宝とも言うべきボーカリストは、2016年もその進化を止めない。

文章:三宅正一