Album Review: 秋休み 屈託のないポップ・センスとナチュラルさが心地よい、韓国のデュオによる3rdアルバム『3番目の季節』
Album Review: 秋休み 屈託のないポップ・センスとナチュラルさが心地よい、韓国のデュオによる3rdアルバム『3番目の季節』

 インディ・ポップというと、凝りに凝ったコード進行やサウンドといったイメージが湧いてしまう。でも本来“ポップ”という言葉に、そんなにひねくれたことを求めるのはおかしいんじゃないだろうか。なんてことをあらためて考えさせてくれるのが、韓国のポップス・グループ、秋休み(Autumn Vacation)。女性ヴォーカルのゲピと、ギタリストでありソングライターの男性バビという2人のユニットだ。2010年にアルバム『秋休み』を発表するや、あっという間に話題になり日本でもリリース。セカンド・アルバム『鮮明』に続く3作目が、この『3番目の季節』である。

 彼らの良さは、本当に屈託のないポップ・センスだ。ピアノやアコースティック・ギターを中心としたシンプルなサウンドと、ノンビブラートのストレートな歌声で綴られるのは、親しみやすいメロディ・ライン。そこにはインディ・シーンにありがちなオルタナティヴな雰囲気は薄いし、かといって過剰な売れ線の味付けをしているわけでもない。ただナチュラルに淡々と歌を届けるというイメージが清々しい。この曇りのない心地よさは、ありそうでない感覚かもしれない。

 確かに韓国語で歌っていることで、多少はワールドミュージック的なエキゾチシズムを感じることはできる。しかし、それ以上にシンプルな楽曲の力によって、言葉や国籍の壁は軽々と超えてしまう。パッと聴いただけでは、良質なJ–POPといってもいいくらい自然に耳に入り込んでくるのだ。逆に言えば、普遍的なメロディや歌声は世界基準とも言えるし、今後彼らが大きく世界に羽ばたく可能性も感じられる。その証拠が、ラストに収められた「時々狂おしいほど君を抱きしめたくなる時がある」という切ないミディアム・バラード。デビュー・アルバムに収められていた名曲を日本語ヴァージョンにすることで、ぐっと心の琴線を響かせてくれる。ほとばしるような情感豊かなポップスを聴きたいと思うなら、迷わず手に取ってほしい一枚だ。

Text: 栗本 斉

◎リリース情報
『3番目の季節』
秋休み
2015/11/25 RELEASE
2,484円(tax incl.)