Album Review: ジャン・ミッシェル・ジャール フランスが誇る鬼才x錚々たるゲストが織りなす魅惑の音世界
Album Review: ジャン・ミッシェル・ジャール フランスが誇る鬼才x錚々たるゲストが織りなす魅惑の音世界

 昨今のエレクトロ・ブーム。ちょっと飽和気味かなと思う反面、レトロ感覚の心地いサウンドを作り出すアーティストも充実してきた。ルーツはクラフトワークやYMOじゃなくて、ヴァンゲリスやジャン・ミッシェル・ジャールじゃないかなと感じるサウンドも多いが、そんなベストなタイミングでジャン・ミッシェル・ジャールの新作が発表される。フランス出身のジャンは、1970年代半ばから『Oxygene(幻想惑星)』や『Equinoxe(軌跡)』といったコンセプチュアルなアルバムを世界中で大ヒットさせ、数万から数十万人単位の大規模なコンサート・パフォーマンスで知られている。日本では小室哲哉と共演したことでも有名だ。

 8年ぶりの新作となった『エレクトロニカ1: ザ・タイム・マシーン』は、なによりも豪華なゲスト・ミュージシャンに目を奪われるだろう。冒頭を飾る表題曲の「ザ・タイム・マシーン」ではエレクトロ・クラッシュのブームに乗って登場したドイツのボーイズ・ノイズがアッパーなビートを加え、メロウでメランコリックな「クローズ・ユア・アイズ」はフランスのエールが華を添える。一番ジャンらしいと思える「オートマティック」ではイレイジャーのヴィンス・クラークが参加していて思わず納得した。他にも、モービー、アーミン・ヴァン・ブーレン、マッシヴ・アタックの3Dなどが名前を連ねている。

 しかし、かなり異色のゲストがいるのも事実。ザ・フーのピート・タウンゼントが歌っている「トラヴェレイター(パート2)」にはびっくりしたし、ホラー映画の巨匠監督でありミュージシャンとしても知られるジョン・カーペンターとの相性の良さにも思わず頷いた。そして、クラシック界ではトップを走る中国人ピアニストのラン・ランを招くというアイデアも秀逸。とにかくゲストの組み合わせの妙に溢れているばかりか、その出来栄え自体もジャン特有のスケール感を絶対に外さないのだ。これぞ彼の王道といってもいいくらい、その世界観はびくとも揺らがない。昔からのファンはもちろんだが、最近のエレポップやEDMでシンセ・サウンドに興味を持ったなら必聴。そして、タイトルに“1”と付いているので、第二弾も期待して待ちたいと思う。

Text: 栗本 斉

◎リリース情報
『エレクトロニカ1: ザ・タイム・マシーン』
ジャン・ミシェル・ジャール
2015/12/02 RELEASE
2,808円(tax incl.)