YEN TOWN BAND 結成以来初となる全国ツアー閉幕 公式ライブレポ&写真到着
YEN TOWN BAND 結成以来初となる全国ツアー閉幕 公式ライブレポ&写真到着

 1996年に岩井俊二が監督、小林武史が音楽を担当した映画『スワロウテイル』から飛び出した伝説のバンド YEN TOWN BAND。20年分の多くの笑顔と感涙に包まれた、バンド結成以来初となる全国ツアーが閉幕し、その公式ライブレポートが到着した。

YEN TOWN BAND ライブ写真一覧

 今年9月に約12年ぶりの復活を果たしたYEN TOWN BAND(以下、YTB)が10月22日、全国5都市を巡るライブイベント【JFL presents LIVE FOR THE NEXT supported by ELECOM】の東京公演に姿を現した。ゲストアーティストを迎えて行われるこのツアー。直前にプレイしたLily Chou-Chouのステージにそのまま小林武史(key,g)と名越由貴夫(g)が残って演奏を続けるシーンから、その日のステージは幕開けた。

 まるで深海のような暗闇の中、流れるメロディはいつしか聴き覚えのある「Gold Rush」のイントロへと繋がっていく。1996年に公開された映画『スワロウテイル』の中では、確かマーチングドラムっぽいリズムのインストナンバーだったはず。だが、この日は透き通るような鍵盤の音色が非常に印象的で、その暗がりの中にChara(vo)、村田シゲ(b)、吉木諒祐(dr)、平岡恵子(cho)が静かにスタンバイ。その幻想的なオープニングの空気を一瞬で変えたのは、やはりCharaの、あの歌声だった。

 オリジナルではアコギだったイントロを鍵盤で鳴らした「Sunday Park」。フロアから「グリコー!」という声援が飛ぶ。“グリコ”とは当時、映画の中でCharaが演じた主人公の名。そのグリコがボーカルを務めた架空のバンドがYTBである。モノクロからセピアへ、セピアからカラーへ。彼女の歌声がオーディエンスを包んでいくと同時に、フロアの景色が一気に色づき始めていく。「YEN TOWN BANDです。初めての人も元気~?」。割れんばかりの大きな拍手と歓声で迎えられ、笑顔を見せるCharaが客席に語りかける。

 続く「Mama's alright」、「上海 ベイベ」では、キュートなストロベリーブロンドと花柄のチャイナドレスのスリットを揺らし、コケティッシュな魅力を存分に発揮。「映画の中で、グリコがお母さんに会いたくて作った曲です」と前置きして歌った「小さな手のひら」では、まるで一つの楽器のように印象的なウィスパーボイスで、その世界観をさらに深めてくれていた。また、映画の中でも重要な役割を果たしていたフランク・シナトラのカバー曲「My way」に続いて、新曲「EL」を披露し、ボーカルとエレピだけのシンプルなオープニングから、徐々にサウンドが足し増されていく壮大なバラードで、新たな一面を聴かせてくれていた。

 その後、「She don't care」からのコントラストも絶妙に、本編ラストでは、今なお歌い継がれる名曲「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」。イントロが会場に鳴り響いた瞬間、会場からはこの日一番の歓声が飛び交い、フロアを圧倒した。メンバーがステージ袖へ消えても鳴り止むことのない拍手は、再び6人をステージ上へと呼び戻し、そのままアンコールへ突入。最後に演奏された楽曲は、今回の【JFL presents LIVE FOR THE NEXT supported by ELECOM】テーマソングでもあり、バンドにとっては約20年振りのシングルとなる『アイノネ』であった。

 フロアを埋め尽くすオーディエンスが、じっくりと噛み締めるように新曲「アイノネ」を聴き込んでいた印象的な伝説的なライブは、プロデューサー小林武史によるメンバー紹介の後、惜しまれつつも幕を下ろした。どこまでも力強く刻まれるビート、その包み込むような“愛の根/愛の音”のメッセージを感じながら、これから始まる新たな物語に想いを馳せた夜だった。

レポート:なかしまさおり
カメラマン:上飯坂一

◎ライブ【JFL presents LIVE FOR THE NEXT supported by ELECOM】SET LIST:
01.Sunday Park
02.Mama's alright
03.上海 ベイベ
04.小さな手のひら
05.My way
06.EL(新曲)
07.She don't care
08.してよ してよ
09.Swallowtail Butterfly~あいのうた~
En1.アイノネ(新曲)