新国立劇場『リング』序夜「ラインの黄金」開幕、飯守泰次郎指揮、世界的ワーグナー歌手が集結
新国立劇場『リング』序夜「ラインの黄金」開幕、飯守泰次郎指揮、世界的ワーグナー歌手が集結

 10月1日、東京・新国立劇場にて、『ニーベルングの指環』序夜「ラインの黄金」初日が開幕した。飯守泰次郎指揮、演出はドイツの伝説的な演出家フリードリヒが晩年にフィンランド国立歌劇場で手がけたプロダクションとなっている。

 『ニーベルングの指環』は、ドイツ・オペラの巨匠リヒャルト・ワーグナーが26年にわたる歳月をかけて創りあげたオペラ史上最大級の作品である。ドイツの叙事詩『ニーベルンゲンの歌』や北欧神話を題材として、台本もワーグナー自身が手がけた。全体は、序夜『ラインの黄金』、第1日『ワルキューレ』、第2日『ジークフリート』、第3日『神々の黄昏』の4部から成っており、上演には延べ約15時間を要する。

 ワーグナー自らが『ニーベルングの指環』を上演する為に創設した音楽祭「バイロイト音楽祭」に、1971年、日本人で初めて音楽助手に正式に就任した飯守泰次郎は、以来20年以上にわたって、多くの夏をバイロイトで過ごしてきており、ベームやブーレーズなど錚々たる指揮者との共同作業を経て、日本では2000年から03年にかけて4年がかりで『ニーベルングの指環』上演に取り組み、大成功を収めている。

 その飯守が2014年9月に新国立劇場のオペラ芸術監督に就任し、10月の開幕公演で『パルジファル』そして2015年には『さまよえるオランダ人』を指揮。第2シーズンである2015/2016シーズンにて、この巨大な歌劇『ニーベルングの指環』全4夜を上演することとなった。世界に誇る水準での舞台をこの日本で味わえることは間違いないだろう。

 物語は、権力の象徴である黄金の指環をめぐって、神々と人間が三世代に渡って争いを繰り広げ、最後に世界が崩壊するまでが描かれるこの長大な物語。序夜の『ラインの黄金』は全体のプロローグにあたり、権力をめぐる闘争、そして指環の呪いやそれぞれの思惑などが、この後に展開されるドラマの伏線として、入り口となっている。

 楽曲には多数のライトモティーフ(示導動機)が使用されており、長大な作品全体に統一感を与えている。この複雑な楽曲の重なり合いを楽しむべく、飯守泰次郎がおもな示導動機(ライトモティーフ)をピアノを使って紹介している音楽講座動画が公開されているので、鑑賞の際には是非見ておきたい。

 また今回の上演に際しては世界に名だたるワーグナー歌手が集結しており、神々の長ヴォータンを歌うのは、09・10年新国立劇場「ニーベルングの指環」でもヴォータンを歌ったラジライネン。アルベリヒにはワーグナー作品で近年脚光を浴びているガゼリ、フリッカにはベルリン州立歌劇場、バイロイト音楽祭などを中心に活躍するシュレーダーを迎えました。特に注目なのは『ラインの黄金』ローゲ役は今回はロールデビューとなる、世界的なヘルデンテノールのグールド。ローゲ、ジークムント、ジークフリート役と、4夜すべての公演に出演する予定。

 「ラインの黄金」初日に合わせて、第一夜「ワルキューレ」そして第二夜「ジークフリート」の日程発表も行われ、2016/2017シーズンの楽しみが目前に迫ってきた今、先の物語をより堪能する為の入り口となる「ラインの黄金」。世界最高水準の歌手が集い、伝説的演出家のスタイリッシュな舞台で描かれる壮大な神々の物語を、今こそ見逃さないようにしたい。

◎公演概要
新国立劇場2015/2016シーズン オープニング公演
リヒャルト・ワーグナー 楽劇「ニーベルングの指環」
序夜「ラインの黄金」全6公演
指揮:飯守泰次郎
演出:ゲッツ・フリードリヒ
ヴォータン:ユッカ・ラジライネン
ローゲ:ステファン・グールド
アルベリヒ:トーマス・ガゼリ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

2015年10月1日(木)19時開演 / 4日(日)14時開演 / 7日(水)14時開演 / 10日(土)14時開演 / 14日(水)19時開演 / 17日(土)14時開演

text by yokano、撮影:寺司 正彦 / 提供:新国立劇場