須長和広、quasimodeベーシストによる初ソロ公演をレポート ジャズとは離れたサウンドで新たな一面を魅せる
須長和広、quasimodeベーシストによる初ソロ公演をレポート ジャズとは離れたサウンドで新たな一面を魅せる

 この日「ビルボードライブ東京」で行われたのは、須長和広の『MIRROR』リリースライブ。その2ndステージに立ち会うことが出来た。まずは、『MIRROR』にも参加した4人のメンバー、神谷洵平 (ds)、椎谷求 (g)、Kan Sano (key)、sugar me (vo)が登場。遅れて、須長和広が『MIRROR』のジャケットと同様の出で立ちで登場し、会場に大拍手が沸き起こった。

 オープニングは『MIRROR』でも1曲目を飾った「Coexistence」。幻想的なサウンドとアコースティック・ベースを手に取った須長のヴォーカルが会場に心地良く響き渡った。続く「空が落ちて」は歌詞にも注目していた曲だが、途中のピアノ、ベース、ドラムのトリオによるプレイも熱かった。

 MCを挟んで、ここから須長はエレクトリック・ベースに持ち替える。イントロが印象的な「Showtime」はギタリストの椎谷をフィーチャー。椎谷とは大橋トリオで知り合ったそうで、脳みそがチカチカするようなギター、普通じゃない感じが好きだったそうだ。そして、sugar meをフィーチャーした「Step Into The Sky」。歌詞はsugar meが付け、空に昇るようなハッピーな気持ちになる曲に仕上がったというが、耳に残る素晴らしい楽曲だ。

 ドラムの神谷をフィーチャーした「Suzanne」は、神谷が初めてヴォーカルを取った曲で、ライヴで歌うのも今回が初めてだったそうだが、ドラムと共にその歌声も印象深かった。Kan Sanoのキーボードとヴォーカルをフィーチャーした「Spring Mind」もカッコ良く、続く「The Butterfly」のラストで、quasimodeの「リライト・マイ・ファイア」でやったカヴァーのショート・ヴァージョンが聴けたのも嬉しかった。「Help Me」はquasimodeのカヴァー作品から漏れたというジョニ・ミッチェルの名曲で、須長のベースも心地良かった。

 そして、いよいよ『MIRROR』からの先行シングルで、NHK-Eテレの人気番組「やさいの時間」のエンディングテーマとして採用された「リズム」が、“幸せな気持ちになって終わります!”という須長のメッセージと共に紹介された。この曲が象徴するように『MIRROR』とこの日のライヴはバンドの一体感を感じさせた。

 アンコールでは『MIRROR』のジャケットをモチーフにしたTシャツを着て須長が1人で登場し、椅子に腰を掛けてベースソロを披露してくれた。そして、これで終演かと思っていた所に、先程LAから帰って来たばかりというマヤ・ハッチが予定外のスペシャル・ゲストとして登場! 『MIRROR』のラストを飾った「Everywhere」がマヤ・ハッチ本人の飛び入りという形で実現! その歌声は感無量だった。

 30歳を過ぎて、自分の中から出る音楽をやりたかったからと今回ソロ・アルバムを作った理由を語ってくれた須長和広。ベーシストとしてだけでなく、その楽曲はキャッチーでポップで、ロックやソウルも感じさせ、ジャズとはかけ離れたサウンドが良い意味でquasimodeファンの期待を裏切り、須長和広の新たな一面を見せてくれた。

 終演後はステージ後方から客席をバックに写真撮影を行い、その後サイン会も行われた。10月16日には『MIRROR』のジャケット撮影を手掛けた写真家、平間至と須長和広のトーク・セッションが開催される。また、10月2日にはビルボードライブ大阪でも公演が行われる。

 最後に、予てからジャズ・シーンで歌が歌える男性のアコースティック・ベース奏者が出て来ないものか…と密かに期待していたが、須長和広こそ、その期待に十分応えてくれる逸材だと思っている。

加瀬正之
ジャズ&音楽情報マガジン『The Walker's』発行人&編集人
http://www.t-walkers.com

◎公演情報
ビルボードライブ東京
2015年9月21日(月)
1stステージ開場15:30 開演16:30
2ndステージ開場18:30 開演19:30

ビルボードライブ大阪
2015年10月2日(金)
1stステージ開場17:30 開演18:30
2ndステージ開場20:30 開演21:30