玉手初美 歌い叫び続ける理由、涙ながらに語る「音楽が無くなったら死ぬなって。自殺するしかないと思ってた」
玉手初美 歌い叫び続ける理由、涙ながらに語る「音楽が無くなったら死ぬなって。自殺するしかないと思ってた」

 怒りを爆発させるように生々しい言葉を絶叫、ギターを掻き鳴らす女性シンガーソングライター 玉手初美。ぶっ飛んだアクトで観客の度肝を抜いている彼女が、涙ながらに音楽と共に生きる人生を選択した理由、そして未来への展望を語った。

玉手初美 強烈なライブ写真一覧

<玉手初美を知る為の計3回の密着取材「なぜ彼女は歌い叫び続けるのか」>

 東京・江戸川区出身、弱冠19歳のシンガーソングライターである彼女は、昨年6月にミニアルバム『遺書』でデビュー。得体の知れない並々ならぬエモーションを叩き付けてくる、あまりに剥き出し過ぎるライブにも定評があり、一度遭遇したら簡単には忘れさせてくれない中毒性、もといトラウマ性を持つ音楽を生んでいる。

 Billboard JAPAN.comでは、そんな彼女に今回を含めて計3回の密着取材を敢行。8月3日の渋谷WWWでは、超絶ドラマー オータコージと危険なにおいがするアクト(映像公開中 https://youtu.be/ZmdVMXrb5ew)を繰り広げ、その直後のインタビューで「偉い人のすることは全部認められるこの世界に……イライラします」のようなフレーズを歌い叫ぶようになった理由と経緯を説明してくれた。

01.玉手初美「この世界に……イライラします」オータコージとの危険なにおいがするライブ映像&インタビュー公開(http://bit.ly/1LmrCqa)

 8月18日 高円寺U-hAでの弾き語りライブでは、序盤から「生きる理由とか、死ぬのが怖いとか、考える余裕もないの……」と、剥き出しの、装飾のない歌を、手を伸ばせば届く至近距離の観客の前でお届け。直後のインタビューでは、アイドルに憧れていた意外な過去を明かしつつ、「玉手さんって売れたい人なんですか?」という質問に対して赤裸々な心情を吐露。周囲の反応や音楽家としての未来に対し、迷いを感じさせた。

02.玉手初美「消えて 消えて 消えて!」剥き出し過ぎる衝撃アクト展開 そしてアイドルに憧れていた意外な過去語る(http://bit.ly/1W7hZki)

<涙ながらに語ってくれた、玉手初美の音楽人生の実態>

 その約1か月後、耳の早いリスナーやロックミュージシャンの間での注目度も高まっている状況下で、東高円寺U.F.O.CLUBにて開催されたライブイベントへ出演。オータコージと本人曰く「死ぬんじゃないかなと思いました」と語るほどの命懸けの、感情がすべてを飲み込んでいくようなアクトを叩き付け、他の出演者のファン含むオーディエンスを圧倒し続けた。そしてBillboard JAPAN.comからの3回目となるインタビューに応え、彼女はそこで涙を流す。以下、玉手初美の音楽人生の実態。ご覧下さい。

◎玉手初美 終演後インタビュー

--本日のライブはいかがでしたか?
玉手初美:今日も死ぬんじゃないかなと思いました。途中、それを覚悟しました。
--オータさんとのライブは基本的に死を覚悟するんですね(笑)。
玉手初美:そうですね。
--でも玉手さんは音楽があるから生きている印象もあります。
玉手初美:……近々、独立するんですけど、実家を出て。もしそれで音楽できなくなっちゃったらどうするんだろう? って考えたら、私、いなくなっちゃうんじゃないかなと思って。多分……自分が制御できなくなっちゃうと思いますね。
--具体的に言うと?
玉手初美:日々、いろいろツラいことがあるじゃないですか。最近思うのは、もうちょっと若い頃、小学生とか中学生の頃は慣れっこだったことが、今19歳になってすごくツラく感じるようになった。感受性が豊かになったからなのか、めちゃくちゃそれが今はツラく感じてて。私、このままどうにかなっちゃうんじゃないかな? って本当に思う。制御が出来なくなるかもしれないっていう恐怖が今の時点でもあるんで、もし支えになってる音楽が無くなっちゃったら、いなくなるしかないのかなって。

--例えばどんなことで「すごくツラい」って思うの?
玉手初美:曲が出来ないと。そうなると自分の体調もモチベーションも下がって、仕事も行きたくない。誰とも会いたくない。どんどん塞ぎこんでいく。家のもの、ギターとかテーブルとかを壊したくてしょうがなくなるんですよね(笑)。恐ろしいです。でも壊せないからそこでジリジリして……ただひらすらに別のことを考えなくちゃもたない。
--音楽がないと生きていけないけど、音楽があるから苦しくなるっていう。
玉手初美:そうなんですよ。ツラさの原因は音楽だから、それをやってなかったら、私、幸せだったんじゃないかなって。良い人ができて、一緒に暮らして、子供が生まれて、普通に仕事もやって、幸せな生活です。みたいなものを知ってしまったら、音楽をやりたいと思えるかどうか正直分からない。
--じゃあ、結婚したら音楽を手放す?
玉手初美:イヤです。今の状態ではイヤです。というか、そういう形の幸せな人生を選べない。

--なんでそれを選べない人になっちゃったんですかね?
玉手初美:普通の幸せっていうのが分かんなかったんでしょうね。……失ったほうだと思ってるんで。
--何を?
玉手初美:みんなが感じてる普通の日常の幸せ。それを幸せだって感じる事が出来なくなってしまったんだと思うんです。だから音楽をやり始めた訳で。私、普通の友達もいるっちゃいるんですけど、あんまり良い思い出が……悪い思い出のほうが浮かんでくるし、家族も……良い親ですけど、ちっちゃい頃は親なんて見れなかったんで、毎晩毎晩ツラかった。離婚してお母さんが居なくなってツラくて泣いて、「私、愛されてないんだな」みたいに子供ながらに思ってて(笑)、それでひとりで活動するようになったんですよ。中学生のときから。音楽って自分の中に篭ってやるものだから、歌を習ったことはなかったんですけど、習いたくてもお金がないから無料のセミナーに何個も通って……親には一切頼れないし、頼りたくないし、親も「頼るな」って言ってて、でもそれがあたりまえだと思ってたんですよね。幸せとかは音楽の中でしか感じなかったんですよ。だから音楽が無くなったら死ぬ。自殺するしかないと思ってた。だからこういう風に生きてるんだと思います。すみません、長々と。

--今現在、音楽やってて良かったと思えてる?
玉手初美:音楽やってて……財産が出来た。音楽自体がというより、こういう風に平賀さんも来てくれて、豊岡さん(スタッフ)もいてくれて、オータさんもいてくれて。こういう風にいろんな人と会って、一緒にご飯食べるのも美味しいし、こうして話すのも楽しいし、帰り道だって「生きてることが楽しい」って…………すごく財産だと思う。(涙を流す)
--嬉しいんですね。
玉手初美:そう考えると……良かったなって思いますね。
--音楽で会えた人が尊い?
玉手初美:尊いし、そういう人たちがいないと生きていけないと思いますね。そう考えると幸せだなって、今感じました。

--では、その人たちとどんな将来を歩めていけたら良いなって思います?
玉手初美:将来考えると……
--不安になる?
玉手初美:いや、豊岡さん、死んじゃったらどうしようって(笑)。
--勝手に殺さないで(笑)。
玉手初美:でも私のほうが何十コも年下なんで考えちゃうんですよね。「みんな、居なくなっちゃったらどうしよう!?」って思うんですけど、それまでに見せたいのは、やっぱり武道館でライブすることもそうですし、アンダーグラウンドの音楽が深夜のテレビで流れているのが嫌いなんで……
--あ、そうなんだ?
玉手初美:アンダーグラウンドの音楽が嫌いなんじゃなくて、そういったものを深夜でしか流さないのがイヤで、別に『ミュージックステーション』に出たって良いじゃないですか。そこで激しい、卑猥な言葉も歌っていいと思うし、何だって言っていいと思う。だから私が『ミュージックステーション』に出ているところを見せたい。
--玉手初美の歌が『ミュージックステーション』で流れたら事件ですよ(笑)。
玉手初美:出たいです! 歌いたい! 別にアンダーグラウンドを代表している訳じゃないですけど、その中のひとりとして売れてるJ-POPの人たちと並んで出たいです。それをみんなに見せたいです。

取材&テキスト:平賀哲雄
撮影:西澤裕郎