玉手初美「消えて 消えて 消えて!」剥き出し過ぎる衝撃アクト展開 そしてアイドルに憧れていた意外な過去語る
玉手初美「消えて 消えて 消えて!」剥き出し過ぎる衝撃アクト展開 そしてアイドルに憧れていた意外な過去語る

 怒りを爆発させるように生々しい言葉を絶叫、ギターを掻き鳴らす女性シンガーソングライター 玉手初美。8月18日 高円寺U-hAにて弾き語りライブを敢行した。

<剥き出し過ぎる玉手初美 オータコージとのライブ動画が話題に>

 玉手初美とは、東京・江戸川区出身、弱冠19歳のシンガーソングライター。得体の知れない並々ならぬエモーションを叩き付けてくる、あまりに剥き出し過ぎるライブにも定評があり、一度遭遇したら簡単には忘れさせてくれない中毒性、もといトラウマ性を持つ音楽を生んでいる。つい先日、渋谷WWWにて超絶ドラマー オータコージ(曽我部恵一BAND、L.E.D.、OishiiOishii)と敢行した強烈なライブの模様(http://youtu.be/ZmdVMXrb5ew)がYouTubeにフル尺公開されると、こちらも耳の早いリスナーや金田康平(THEラブ人間)などロックミュージシャンの間で話題となった。

<eastern youth? 銀杏BOYZ? ニルヴァーナ? ひたすら玉手初美>

 8月18日 高円寺U-hAでは、冒頭にピアニストの穏やかな演奏を入れつつ、本編は単身、自身の歌とアコースティックギター1本のみでのライブを敢行。カフェ&バーでもあるオシャレな空間ではあったが、序盤から「生きる理由とか、死ぬのが怖いとか、考える余裕もないの……」と、剥き出しの、装飾のない歌を、手を伸ばせば届く至近距離の観客の前でお届け。その後も家族や学校といった日常生活で生まれた感情でありながら、日常で吐き出す訳にはいかない怒りや虚しさを歌、音楽に変換する事で爆発させていく。

 その純度の高い熱量を体感した人は、eastern youthや銀杏BOYZ、はたまたニルヴァーナ等の先達と重ねることもあるかもしれない。それほどに彼女のライブは直情的だし、歌われる言葉はどれも純粋にシニカルでラディカルだ。「全てめんどくさい あの人もあの人もあの人もあの人もあの人もあの人も 私だって。」「私は他の誰でもないの ただ一人の人間です。私だけの人生です。成功者のスピーチなんて聞きたくないの マニュアルは入らないわ 消えて 消えて 消えて 消えて」

 これを歌うのが玉手初美。この日も彼女は演技でも計算でもなく、ひたすらに玉手初美を歌い叫び、掻き鳴らしていた。

アイドルに憧れる→YUI主演映画の影響で音楽始める→今の玉手初美?>

 渋谷WWWでのライブ終演後に行ったインタビュー(http://bit.ly/1LmrCqa)に続き、この日も終演後の彼女に話を訊いた。

◎玉手初美 終演後インタビュー

--本日のライブ、自身ではどんな印象を?
玉手初美:ひとりだと、オータさんとのときとはまた違って、歌詞も音もハッキリ聴こえるんで……「どうすればこの1曲にちゃんと出せるかな?」ということに特化したライブだったと思います。

--玉手さんって元々どういった経緯で音楽を選んだ人なんですか?
玉手初美:元々父がクラシックピアノをずっと弾いていたんですけど、私は音楽というよりはアイドルが好きで(笑)。小さい頃はベッドの上でジャンプしながらアイドルみたいに歌ってて。上戸彩かな? 上戸彩じゃないか。なんかいたんですよ、金髪のショートのアイドルの娘が。その娘が可愛くて。
--じゃあ、元々アイドルになりたかったの?
玉手初美:「良いな」って思ってました。
--意外です(笑)。
玉手初美:でもそこからヒップホップのダンサーに憧れたり、いろんな寄り道をしている中で、女の子が路上ライブしている映画を観て。
--『タイヨウのうた』?
玉手初美:そうです。あれを観て「私も路上ライブやりたい。ギター買って」って親に頼んで買ってもらい、始めました。

--かつてはアイドルになりたくて、YUI主演映画の影響でギター持って歌い始めて、そんな女の子がなんで今こんなことになってるんですか?
玉手初美:(笑)。よく分かんないですけど、強く歌いたかったんですよね。勝手にこういう風になっていった。感情をすごく出したいし、そういう歌がうたいたかった。

--今はどんなアーティストや表現者になれてると思いますか?
玉手初美:私は面倒くさがり屋です。作詞家さんとか、みんな言葉を上手にまとめているじゃないですか。私、ああいう風に出来なくて。もうちょっとオブラートに包めばいいのにと思われるような一文もそのまま書いてしまうんです。
--でもそのまま歌いたいからそうしているのでは?
玉手初美:…………そのほうが伝わるかなって思うんですけど、「これだとストレート過ぎて聞けない」って人もいるし。
--そういうのって気にするんですか?
玉手初美:正直気にします。でもだからって……
--そこは抗えなさそうですよね?
玉手初美:うん。
--それでオブラートに包んだら歌わなくなっちゃうんじゃないですか、その曲。
玉手初美:歌わなくていいか……ってなると思う(笑)。

--玉手さんって売れたい人なんですか? 武道館でライブしたい気持ちとかあるの?
玉手初美:あるっちゃありますけど、半分半分。中途半端で申し訳ないんですけど……このままがいいって思う日もあるんですけど、でもやっぱりそういう風になりたいって思う日もあって。なんでしょう? やっぱりいろんな人に観てもらいたいし、好きになってもらいたいし、何かそこで自分が出来ればいいし、それで何か持ち帰ってほしい。けど、大きくなっていくにつれて何か出来なくなってくるんなら…………

--今、玉手初美の存在が少しずつ知れ渡っていってると思うんですが、この状況にはどんなことを感じますか?
玉手初美:嬉しいです。嬉しいけど、申し訳ないって思う。
--なんでですか?
玉手初美:やっぱりいくら歌っても………本当に届いたのかなって、届けられたのかなって、正直そういう風に思ってしまうところがあるんで。………嬉しいのは第一にあるんですけどね。なんかすみません、中途半端なことしか言えなくて。

取材&テキスト:平賀哲雄
撮影:内山直也