Album Review: 結婚・出産を経て8年ぶりのリリースとなるヒラリー・ダフの5thアルバム『ブリーズ・イン ブリーズ・アウト』
Album Review: 結婚・出産を経て8年ぶりのリリースとなるヒラリー・ダフの5thアルバム『ブリーズ・イン ブリーズ・アウト』

 2001年、ディズニーチャンネルのドラマ『リジー・マグワイア』で主役を務めたのが、若干14歳。翌々年の2003年には、デビュー・アルバム『メタモルフォーゼ』でNo.1デビューを果たし、以降、女優業と並行してリリースした2nd『ヒラリー・ダフ』(2004年)、3rd『モストウォンテッ』(2005年)、4th『ディグニティ』(2007年)と、アルバムすべてがTOP10入りするという、歌手業での大成功も同時におさめた。まさに、アメリカンドリームを実現させた次世代スターの1人である、ヒラリー・ダフ。

 彼女のアーティストしての復帰を望んでいたファンも多いはず。というのも、2007年にリリースした『ディグニティ』から8年間、ベストなどの企画盤を除いては、音沙汰がなかったからだ。その間、ヒラリーはアイスホッケー選手のマイク・コムリーと結婚、そして長男を出産し、私生活での充実と苦労を語っている。音源の解禁はなかったかわりに、3冊の小説を発表するなど、多岐にわたり活躍の幅を広げたのも、この時期。

 そして、女性として熟しはじめ、さまざまな経験を経てリリースされるのが、約8年ぶりとなる新作『ブリーズ・イン ブリーズ・アウト』だ。デビュー曲「ソー・イエスタデイ」でみせた、あどけない表情はどこかへ、先行シングル「スパークス」で醸しだした、色気たっぷりの悩ましい表情、吐息を絡ませるヴォーカルワークは、まさにアルバムタイトルの“ブリーズ・イン ブリーズ・アウト”状態…。

 一児の母になったことで、アダルト・コンテンポラリーのような、ゆるやかなサウンドで復帰するのかと思いきや、「ワン・イン・ア・ミリオン」や「タトゥー」など、EDMベースのダンストラックが続く、煌びやかなポップ・サウンドが目白押しの、今っぽさ全開な作品に仕上がっている。「早く復帰したかったの、思いっきりハジけたいわ!」という思いが伝わってくるような、歌から離れていたフラストレーションが解消されてゆく、そんな印象を受けるアルバムだ。

 また、歌唱や楽曲のクオリティの進化も明らかで、宇多田ヒカルやブリトニー・スピアーズ等を手掛けたブラッドシャイ&アバントや、EDMの売れっ子ヴォーカル、マシュー・コーマ、今年のグラミー賞を彩ったエド・シーランなど、バックを支えるメンバーも豪華。それらのヴァラエティ豊かなトラックも何なくこなすヒラリーは、アイドルからアーティストへ、90年代に進化したカイリー・ミノーグの再来のような成長を遂げている。ゆくゆくは、カイリー・テイストのステージも期待できるのでは…!?

 本作を期に、これから何かしらのアクションを起こしそうな、ヒラリー嬢に期待が高まる。

Text: 本家 一成

◎リリース情報
『ブリーズ・イン ブリーズ・アウト』
ヒラリー・ダフ
2015/08/05 RELEASE
2,592円(tax incl.)