SEKAI NO OWARI、日産スタジアム公演レポート!日本で最大のステージでどこまでも作り手の血が通うライブを決行
SEKAI NO OWARI、日産スタジアム公演レポート!日本で最大のステージでどこまでも作り手の血が通うライブを決行

 2015年7月18日から19日の二日間、SEKAI NO OWARIが神奈川・日産スタジアムにてライブを行った。二日間で計14万人という動員はもちろんバンド史上最大規模。とは言え、ライブ中はもちろん、それ以外にも随所に工夫の凝らされた、どこまでも発信者であるバンドの通った血が感じられるライブだった。

 筆者は公演2日目に参加。天気は晴れ、加えて、ほどほどに雲が多く風も強風でない比較的過ごしやすい気候だ。公演は【Twilight City】(=黄昏の街)と名付けられ、会場ではスタジアムの外周に沿って食べ物(りんご飴や焼きソバ等)や遊戯(わなげ等)の露店が軒を連ねる。場内のスピーカーでも祭り囃子が流れ、さながら縁日のような雰囲気。セカオワのライブにつき物の仮装ファンはもちろん、浴衣を着た人もチラホラ見受けられた。

 受付を済ませてスタジアム内に入ると、度肝を抜かれるのが、“セカオワ的世界観”の象徴でもある巨大樹を街に見立てて再デザインした高さ40メートルの巨大舞台セット。巨大樹の枝葉の間から建物が姿をのぞかせるそのデザインは、どこか映画『千と千尋の神隠し』とも通じるアジア的センスの色濃いもの。スタジアムを横に使ったステージの構造も含めて、とてもダイナミックな印象を受ける。

 また、場内アナウンスは列車の車掌を思わせる口調で、ライブの注意事項などを伝えており、この【Twilight City】の主要コンセプトの一つが“列車”であることも開演前から段々と分かってくる。ちなみに、この日は席のエリア毎に「天空橋」「月光駅前」など独特のネーミングが行われ、これがその列車が巡回している駅(=街)の名前に対応している、という仕掛けにも。つまり、この時点で“夏祭り”、“列車”、“街”など複数のコンセプトが重層的に折り重なった世界観が想定されているのだ。

 開演時刻の17時半になると、まずはオープニング・アクトにアメリカの人気歌手、オースティン・マホーンがパフォーマンス。この抜擢は世界進出を図る現在のセカオワの方針を反映したものだろう。歌はもちろん、ヒップホップやエレクトロのビートに合わせたダンスも得意とするマホーン。さらにこの日は自身の爪弾くギターと鍵盤の伴奏でも熱唱し、「Say You're Just A Friend」や「Mmm Yeah ft. Pitbull」など8曲を披露。個人的に、セカオワ・ファンの反応が気になっていたのだが、主に若い世代を中心にマホーンに熱心な声援を送るファンがいただけでなく、会場に充満した縁日的なハレの雰囲気も奏功したのか、観客の多くが非常にオープンな姿勢でマホーンの演奏を楽しんでいたのが印象的だった。

 マホーンの演奏後、さらにステージに楽器などを配置して、いよいよセカオワの出番。まず、開演を告げる大きな鐘の音が会場に響き渡る。すると女性ヴォーカルのハミングのみをBGMに、宮沢賢治「銀河鉄道の夜」を彷彿とさせるアニメがスクリーンで流れ始める。そして流れ始めるキック・ドラムとチャイムの音…。揃いの赤い上着を身につけたメンバーの登場とともにステージ前に花火が上がり、「炎と森のカーニバル」からライブはスタート。演奏中、何の比喩でもなくタイトル通り「炎」がステージ上で揺らめき、その中でメンバー4人が演奏する。

 続く2曲目は「Love the warz -rearraged-」。スクリーンにメッセージ性の強い歌詞が映し出され、今度は花火の代わりに火柱がステージ前に吹き上がる。この日、演奏された曲のうち約7割の曲でスクリーンに歌詞が映し出され、彼らがいかに意識的に歌詞やそのメッセージに重きを置いているかが伺えた。続く3曲目は「虹色の戦争」。演奏前、Nakajinが「一緒に歌ってください!」と煽った通り、三番ではバンドの伴奏に観客の合唱のみが響き渡る展開に。ファンの歌を聴いたFukaseは「いいねえ」と観客を賞賛、大きな歓声がそれに応えた。

 4曲目、「不死鳥」の演奏を挟んでSaoriのMCへ。「ちょっと涼しくなってきたけど、みんな熱中症とか大丈夫?」と観客を気遣い「次はライブで初披露する曲をやります。お気に入りの映像とともに。」と前置きし、自身が作詞曲を担当した「PLAY」を演奏。RPGゲームにインスピレーションを受けた歌詞を、手作り感あふれるアニメに変換した映像がかわいい。

 演奏後、NakajinとFukaseが改めて観客に挨拶、今回のステージ・セットのことやタイトルの【Twilight】の意味などを説明しながら、ステージ袖へと移動していく。するとそこには冒頭のアニメに映っていたものと同じデザインの列車が。Nakajinが「今からこの列車に乗ってみんなのところに会いに行きたいと思います!」と宣言、3両編成(!)の赤い列車の屋根に2人が搭乗し、そのまま「ファンタジー」を演奏しながらアリーナ席の外周を回っていく。演奏中もNakajin主導で観客とコール&レスポンスを繰り返し、客席を大いに盛り上げた。

 続くMCではSaoriが自身の描いたイラストを用いたTシャツの話へ。メンバーがSaoriの絵を「気持ち悪くて好き」と評している話など、肩の力の抜けたトークに日頃のバンドの関係性が透けて見える。続いて話題はバンドが主題歌を担当した映画『進撃の巨人』へ。その主題歌2曲「ANTI-HERO」「SOS」をここで披露するというMCに客席が大きく沸いた。

 すでに先日MVがネット上で公開されている「ANTI-HERO」は乾いたブレイクビーツにマイナー調のメロディや裏抜きのギターリフが軽快に絡む一曲。全編英語詞でそのメッセージも強烈な一曲だが、この日のセットリストで映えたのはその良い意味での情報量の少なさ。「Dragon Night」以降の彼らの曲に通じる、フォーカスを絞った音作りが完全に他の曲と一線を画す。さらに、多くの人にとってこの公演で初めて聴くことになったであろう「SOS」はFukaseのファルセットを存分に活かしたゴスペル調の曲で、ほぼ全編ノン・ビートで進む異色作。ストリングスやコーラスのビブラートを意識したような、細かく刻まれるギターも印象的な一曲で、それまでとは一味違う静謐な雰囲気が周囲を包んだ。

 そのまま舞台は暗転し、スクリーンにはメンバー4人に似せた人形劇が始まる。そこでは“DJ LOVEが何をしたら面白いか?”について、DJ LOVE以外の3人が会議しており、その横暴さにDJ LOVE人形が激怒。その怒りのまま、今度は本物のDJ LOVEがメタルバンドに扮して登場しオリジナル曲を演奏するという凝ったキレ芸を展開する。DJ LOVEの演奏後、衣装を革ジャンに変えたFukaseとSaoriが巨大樹セットの中腹に作られた小部屋に登場。DJ LOVEをなだめるような「ピエロ -Twilight City arranged-」が2人の弾き語りで演奏された。演奏前後の会話で、Fukaseは極度の高所恐怖症ぶりを露呈。それでもセットをさらに移動し、今度はNakajinとのコンビで弾き語りで「スノーマジックファンタジー -Twilight City arranged-」を披露した。

 これらのコーナーが終わると、いよいよバンドでの演奏に戻って『Tree』収録のエレポップ・チューン「broken bone」を披露。さらに、レーザーライトを多用した激しい演出が印象的な「Death Disco」へと続け、バンドの音楽面での多様性をアピールする。続けてSaoriがMC、“ピースをテーマに作詞してくれ”と依頼されたというエピソードを明かし、バンドはSaoriが作詞した【NHK全国学校音楽コンクール 課題曲】「プレゼント」の演奏へ。聴き手を優しく励ますようなその歌詞に、直前のササクレ立った「Death Disco」との振り幅を感じ、改めてバンド内にソングライターが3人いるという彼らの強みを実感した。

 いよいよここから本編はラスト・スパート。Nakajinらしい凝ったプロダクションが印象的な「マーメイドラプソディー」が爽やかなムードを演出し、そのまま演奏はバンドにとって目下のアンセムの一つである「スターライトパレード」へ。ここで初めて入場時に渡された時計型の機器も発光し、幻想的なムードの中、観客とバンドのシングアロングが響き渡った。

 続いて演奏されたのはバンドの初期の代表曲「幻の命」。スクリーンも全て消えたシンプル極まりないステージ演出が、バンドにとってこの曲がいまだに特別な曲であることを示す。それに応えるように曲の間奏部では、客席も先の喧騒か嘘のように静まり返る。曲のアウトロの轟音パートは、このバンドがいまだに00年代のポスト・ロックの流れと地続きであったデビュー当時を思い起こさせた。

 その余韻が消えないうちに、暗転していたスクリーンが点くと、冒頭の銀河列車の映像が映し出される。何が起きるのかと身構えていると、なんとさきほどFukaseとNakajinを載せてスタジアムを一周した列車が今度は宙に浮いて空を飛ぶ驚きの展開に! 列車はそのまま移動し、アリーナ席の上を横切っていく。バンドはその間に「ムーンライトステーション」の演奏を披露。さすがにこの演出には度肝が抜かれたのか、客席からも多く驚きの声が上がった。

 そして本編ラストは、2014年、バンドにとって大きな転機となったシングル「Dragon Night」へ。Fukaseはおなじみの旗とトランシーバーを手に、運動の先導者よろしく客席を見据えて歌う。サビの後に待つブレイク・パートでは、比喩ではなくスタジアム全体が揺れるほどに観客が一体となって踊り、その一際大きな盛り上がりの余韻を残したまま本編は幕を閉じた。

 アンコールを待つスタンドからは、手拍子に合わせて「スターライトパレード」のサビが何度も繰り返される。その声援に応え、バンドは再登場。まずは、2013年のブレイク作となった「RPG」を、やはり観客の大合唱とともに披露した。続くMCでは、先ほどの“空飛ぶ列車”の演出が前日は強風でできなかったこと、そして2016年3月より始まる全国ツアーのことが発表され、大きな歓声が客席から上がった。

 ここでFukaseが客席に向かってMC。特に活動の初期において、バンドが通ってきた苦難の時期を振り返り「バンド・コンテストでビリになって『バンド名を変えろ』と言われた」ことや「『ベースとドラムがいないから売れない』と言われた」ことなどを明かしつつ、「でも僕は日本で一番大きなステージに立ってます!」と宣言、さらに「何が言いたいか分かりますか?」と客席に問いかけ「みんなも負けるなってことです!」と力強くメッセージを送った。続けて「すべての戦ってる人に送ります。」と前置きし「Fight Music」の演奏へと繋いだ。

 アンコール・ラストは「インスタントラジオ」。バンドの初期を代表する、ポップで、しかし、今でも根っこは変わらぬ主張の込められた曲で、7万人の客席を躍らせる。最後は巨大樹のセットの上にも花火が上がり、“祭り”のフィナーレに相応しい華々しさの中、全ての演目が終了した。演奏後は、メンバー4人が手を繋いで、オフマイクのまま「ありがとうございました!」と大声で客席に挨拶。それを受けて、スクリーンには、映画のようなエンドロールとBGMが流れる念の入りようで、最後まで“セカオワ・ワールド”に抜かりはなかった。なお、SEKAI NO OWARIは2016年3月より待望の全国ツアーを行うことが決定しているが、次はどんなライブを見せるのか。さらなる新作にも期待しつつ、そちらも楽しみに待ちたい。

◎公演情報
【Twilight City】
2015年7月18日(土)19日(日)神奈川・日産スタジアム
開場15:30/開演17:30

<セットリスト>
01. 炎と森のカーニバル
02. Love the warz -rearranged-
03. 虹色の戦争
04. 不死鳥
05. PLAY
06. ファンタジー
07. ANTI-HERO
08. SOS
09. ピエロ -Twilight City arranged-
10. スノーマジックファンタジー -Twilight City arranged-
11. broken bone
12. Death Disco
13. プレゼント
14. マーメイドラプソディー
15. スターライトパレード
16. 幻の命
17. ムーンライトステーション
18. Dragon Night
<アンコール>
En-01. RPG
En-02. Fight Music
En-03. インスタントラジオ