Album Review: お祭り番長ピットブル、原点回帰のスパニッシュ・アルバム第2弾
Album Review: お祭り番長ピットブル、原点回帰のスパニッシュ・アルバム第2弾

 シーズン到来。昼夜問わず熱くなるこの季節、夏本番を迎えるにあたって、車内にフロアに、常備しておきたいアイテム、ピットブルの新作『ダーレ』が、7月17日(日本盤は8月5日)にリリースされる。

 本作は自身の原点に回帰した、『アルマンド』(2011年)に続く、スペイン語歌唱によるスパニッシュ・アルバムの第2弾。これまでのヒット曲に通ずるヒップ・ホップ感覚を残しつつ、マイアミ・シンガーとしての信念を貫いた、思わず腰が浮きまくるラテン・サウンドが散りばめられた、まさに“踊るための”アルバムに仕上がっている。

 リオのカーニバルを彷彿させるような、露出の高い衣装を纏った美女をバックに、現地の祝祭が蘇るテイストの先行シングル「ピエンサス」では、キューバのナイト・フロアで流れないことはない、レゲトンの代表格であるジェンテ・デ・ソーナとコラボレーション。10年ほど前、日本でも小ブレイクしたレゲトン界において、これほど息の長いアーティストも珍しく、彼らの実力も折り紙付き。

 それから、日本ではプロモーション・シングルとして先行で配信された、「バッデスト・ガール・イン・タウン」に、コンゴ出身のR&Bシンガー、モホンビと、エルトリコ出身のレゲトン・アーティスト、ウィシンというラテン界を盛り上げる2大アーティストを迎え、ホーンが鳴り響く、フロアライクなマイアミ・サウンドをアプローチした。

 英語からスペイン語に移行したとて、これまでのピットブル・サウンドと、何か大きく違ってしまっている…ということもなく、我々日本人の耳には、オリジナル・アルバムの続編として、違和感なくすんなり入ってくる。

 ただ、昨年末にリリースされ、「タイム・オブ・アワ・ライヴス」や「ファン」といった、大ヒット・シングルを生み出した8thアルバム、『グローバリゼーション』と明らかな違いを感じるのは、スペイン語歌唱を含め、サウンドやリリックから醸し出される“夏感”ではないかと。オール・タイムというより、夏を盛り上げるべく作品として取り上げるなら、間違いなく、この『ダーレ』に軍配があがる。

 2009年の夏、突如シーンに現れるや「アイ・ノウ・ユー・ウォント・ミー」がモンスター・ヒットとなり、同夏のミュージック・シーンを盛り上げた、ピットブル。失礼ながら、完全な“一発屋”かと侮っていたのも束の間、「ホテル・ルーム・ サービス」、「ヘイ・ベイビー」、そして初のNo.1をマークした、「ギブ・ミー・エブリシング」と、途切れることなくTOP10ヒットを生み出す、トップ・アーティストとなった。

 そのブレイクから6年、どの年のチャートにおいても、彼の名前がクレジットされなかったことはないが、そういったヒットメイカーとしてのピットブルはさておき、本作『ダーレ』では、ラテン、レゲトン、ダンスポールといった、ラテン・ミュージックに特化した彼のスタイルを、夏の暑さと共に体感していただきたい。

Text: 本家 一成

◎リリース情報
『ダーレ』
ピットブル
2015/08/05 RELEASE
2,376円(tax incl.)