Album Review:坂本真綾の作品の多彩さを再認識、トリビュートアルバムがリリース
Album Review:坂本真綾の作品の多彩さを再認識、トリビュートアルバムがリリース

 2015年4月からデビュー20周年イヤーがスタートする坂本真綾の節目を祝して、様々なアーティストが参加したトリビュートアルバム『REQUEST』が本日4月22日に発売された。11組のアーティストたちが彼女の代表曲や各自の思い入れが深い曲をカヴァーしており、初回限定盤には同曲順のオリジナル音源を収録した『ORIGIN』も同梱される。

 子役の頃から活躍し、アニメや吹き替えの声優としても彼女の声に親しみのある方は多いだろう。本作では、「約束はいらない」のデビューから菅野よう子と作り上げてきた前半の10年を中心に収録されている。20年にわたる音楽人生が詰まった楽曲たちを、ほかのアーティストが演奏するこのアルバムは、いわば彼女に影響を受け、携わってきた彼らからの“はなむけ”とも言える。

 どの作品もそれぞれ原曲のイメージを良い意味で壊し、さらに魅力を引き出している。坂本のライブでの定番曲「ポケットを空にして」は真心ブラザーズさ全開の男臭さがぴったりで、田舎のあぜ道で歌われているような情景が浮かんでくる。また、KIRINJIが演奏する「うちゅうひこうしのうた」は原曲と対照的なシンプルな作りによって、より詞の世界観に集中できる。そして、特に印象的だったのはAKB48の渡辺麻友による「トライアングラー」。力強い芯のある歌声で、原曲の世界観がそのまま出されており、渡辺麻友のイメージを良い意味で裏切ってくれた1曲だった。

 Disc2は、『REQUEST』と同じ曲順で坂本自身が歌う『ORIGIN』。壮大なメロディに心地よい声がのり、作品の多彩さを改めて感じる。そして『REQUEST』と『ORIGIN』を続けて聴くと、カヴァーを披露したアーティストたちが、いかに原曲の持つ良さを絶妙に引き出していたのかを感じることができ、目線が違うとこんな風に景色が見えたんだと気づかせてくれる。本作はまるで歌い手と聞き手がその曲について語り合うような、「共有アルバム」のよう。

 アーティストによって解釈の仕方に違いはあるものの、それぞれの想像力を触発したのは坂本真綾の音楽である。二つが重なり合う時、新たな視点に気づかせ、また彼女の根本に在りつづける何かが見える。今後『REQUEST』で感じたことを発信していく坂本真綾が、さらに楽しみになる一枚でもあった。

 5月には、『REQUEST』に参加しているラスマス・フェイバーとフリーダのライブにスペシャルゲストとして出演する。本作以外に、坂本が歌うTVアニメの作曲・編集を手掛けるなど音楽での交流が深い3人による一夜限りのステージとなる。

◎リリース情報『REQUEST』 
2015/4/22 RELEASE
通常盤:VTCL-60396 2,800円(plus tax)
初回限定盤(2CD):VTZL-99 3,900円(plus tax)

◎公演情報【ラスマス・フェイバーwithフリーダ special guest:坂本真綾】
5月11日(月)ビルボードライブ東京
1st:会場17:30/開演19:00 2nd:会場20:45/開演21:30
ミュージックチャージ:サービスエリア9,000円 カジュアルエリア7,000円
※2ステージ完全入替制、未就学児童入場不可