吉田山田「日々」ヒットや全曲ライブ成功の裏側“吉田山田を貫く為の戦い”
吉田山田「日々」ヒットや全曲ライブ成功の裏側“吉田山田を貫く為の戦い”

 NHK『みんなのうた』に起用された「日々」がロングセールスを記録し、5周年記念5か月5会場マンスリー企画【555ツアー(トリプルファイブツアー)】を敢行していた吉田山田。10月18日 そのツアーファイナル公演をZepp DiverCity(TOKYO)にて開催した。

吉田山田 全曲ライブ写真一覧

<「もういいよっていうぐらいどんどん来ますから。牛丼が」>

 現時点で発表されている楽曲すべてを披露する、初の試みとなった同公演。まず2人っきりで登場した吉田山田は「どれだけアナタに助けられてきただろう どれだけ涙流してしまったろう 忘れないアナタがくれた言葉と笑顔 ありがとう胸を張って今歩いて行く」と、2人の声だけでお届け。この5年分の思い出と感謝を「約束のマーチ」に乗せ、真っ直ぐに響かせていく。そして「皆さん、覚悟はよろしいですか? 牛丼で言ったら(今日のライブは)特盛3杯分ぐらいあるんで」「もういいよっていうぐらいどんどん来ますから。牛丼が」と笑いを誘いつつ、その宣言通り、熱いメッセージがたっぷり込められたナンバーを連発。

<自らが愛した音楽の力を証明しようとした戦い>

 2人だけ。お馴染みのバンドメンバーを従えて。メドレー形式で。映像を多用しながら。芸人顔負けのMCで笑いを生みながら。と、全46曲のライブをとにかく飽きさせないよう様々な手法を取り入れていたが、満員の観客が眠ることなく4時間強を楽しんでいた最大要因は、2人の楽曲と歌声だったことを強調したい。もっと言えば「日々」のヒットなどで順風満帆に見えたこの1,2年間、実は自らに課していたテーマを乗り越えた吉田山田だからこそ、後に目撃者によって伝説化されるであろう全曲ライブを成功させられた。その史実を記したい。

 1年半前の吉田山田は悩んでいた。好き嫌いが激しく分かれる、男性が歌うキラキラ感。今まで「可愛い、可愛い」と言われ続けてきた山田のイメージ。そこから単に脱却するのではなく、吉田山田らしさを貫きながらも万人に耳を傾けてもらう為にはどうしたらいいのか。漠然としている故に難しい“格好良い”というテーマへの挑戦もその一環だった。楽曲制作を吉田と山田に分かれて行うようにもなり、そこでより深くて濃い説得力のある楽曲を生むこと、お互いの重要性を改めて理解してライブの馬力を増すこと。そこには吉田山田を貫く為の戦いがあった。

 どうしたらいいか分からなくて、急に新宿から横浜まで走り出してボロボロになったり(http://bit.ly/1wfe3RD)、呑めなかったお酒に手を出して独自の作曲法まで編み出した(http://bit.ly/1wfiwUo)山田氏のエピソード等は、今でこそ笑い種だが、どれだけ本人は必死だったかをちゃんと物語っている。

 結果、彼らは「日々」で万人の涙を誘い、最新アルバム『吉田山田』を過去最も深くて濃い説得力のあるポップアルバムに仕上げ、過去の楽曲たちもライブでの爆発力や求心力を増し、そこで得た自信は『ミュージックステーション』初出演やビッグネームとの共演等、あらゆる大きなトピックへと繋がっていく。長い説明になってしまったが、この自問自答と試行錯誤を経た吉田山田だからこそ、自らが愛した音楽の力を証明しようとした戦いあってこそ、前代未聞の全曲ライブは成功を収めたと言える。

<「あなたがなんで泣いてるかなんて僕は知らない! だけど」>

 「たくさん曲作ったなぁ。でもね、ときどきね、すごく迷うときがあるんですよ。音楽ってなんなんだろうって。お腹も膨れないし、それによって仕事が捗る訳でもないし、なんなんだろうって。何が変わるんだろうって。このライブハウスに来てから出るまでの何時間で、あなたの何が変わるんだろうって。なんで歌を歌ってるんだろうって。名前も知らないあなたとこの場所で出逢って、大きな声で歌う。一体何なんだろう、これはってときどき思うんです。だけど、やっぱり頭で考えてたって行き止まりはすぐ来ちゃうんですよ。

 理由もなく、ワケもなく、一緒にこの歌に乗せて、大きな声で歌って、笑って。なんでだろう。何かが変わった気がするんですよ! それは僕にも全然分かんないんです。だから僕は大きい声で、理由なんて分かんなくてもいいから、大きな声でみんなと歌いたいと思ってます。今出来ることって、僕にはそれしかないなって。あなたがなんで泣いてるかなんて僕は知らない! だけど、一緒に歌って、笑顔で、泣いて、その瞬間だけは心が通じ合ってるような、そんな気が僕はします。大きな声で、この声がある限り! 歌をうたっていこうと思います。どうか同じ気持ちのあなた、一緒に歌ってほしい!」

 この恥ずかしいぐらいの純粋さが「魔法のような」音楽と光景、大きな共鳴=シンガロングを生んだことも加えておきたい。
 
<「ガムシャランナー」のように恥ずかしいぐらい全力で>

 なお、吉田山田は、5周年イヤーを飾る吉田山田初のシングルA面コレクション『吉田山田シングルズ』を12月17日にリリース。さらに、2015年5月4日にこちらも吉田山田初となる渋谷公会堂でのワンマンライブの開催を発表した。悩み もがき 壁を 壊せ そこには皆が待っている――― この日最後に披露した「ガムシャランナー」のように真っ直ぐ全力で歌い続ける2人の冒険、今後も期待してほしい。

取材&テキスト:平賀哲雄

◎ライブ【「555ツアー(トリプルファイブツアー)」~東京ファイナルファンタジー/吉田山田全曲ライブ~】
10月18日(土)Zepp DiverCity(TOKYO)SET LIST:
01.約束のマーチ
02.希望とキャンディ
03.カシスオレンジ
04.カシオペア
05.涙の海
06.旅立ちの合図
07.地図にない路
08.ごめん、やっぱ好きなんだ。
09.カケラ
10.ハローグッバイ
11.ごめんね
12.泣いて泣いて
13.僕らのためのストーリー
14.サンシャイン
15.ルーとナンシー
16.ありがとう
17.ソウルフード
18.一番星
19.泣いてもいいよ
20.ラブレター
21.花鳥風月
22.かさぶた
23.SMILE
24.愛するキミがそばにいる
25.水色の手袋
26.全部そのままのキミでいい
27.明日がくるよ
28.頑張ることに決めた
29.風と雲と虹
30.光
31.イッパツ
32.春色バスと初恋ベンチ
33.航海
34.メリーゴーランド
35.天使と悪魔
36.ORION
37.YES
38.フリージア
39.魔法のような
ENCORE
40.日々
41.ダイジョーブ
42.Wonder
43.ツボミ
44.涙流星群
45.夏のペダル
46.ガムシャランナー
※M.14~21 メドレー
※M.23~30 メドレー