Apple(アップル)が新しいストリーミング・サービスの料金である月額10ドル(約1,100円)を値下げするために、ストリーミング配信のライセンス料を下げるようメジャー・レーベルと交渉していることが明らかになった。米テクノロジー・ニュースのRe/codeが伝えている。同社は10年前のiTunes立ち上げ時と同じ要領で、レーベル側が慎重になるような事を説得しているようだ。

 値下げ交渉はアップルだけが持っている特権だ。一般的にストリーミング・サービスは、権利所有者たちに支払う金額が多く、わずかなマージンで運用しているため、あまり収益が出ない。しかし、iPhoneの販売で記録を更新したばかりの同社の時価総額は5,930億ドル(約65兆円)であり、レコード業界を熟知した音楽ビジネスの魔術師ジミー・アイオヴィンを獲得したことに触れなくとも、エンターテインメント業界での長きにわたる偉業を考えれば全くもってあり得る話だろう。

 昨今、ダウンロード収益は徐々に減少が見られており、底をつく10年後には音楽業界にとってストリーミング・サービスがダウンロード収益に代わるものとなる事が見込まれているのだ。アップルは以前、iTunesストアで時代の先を行ったが、再び先手を打つ事を狙っている。

 なお、アップルとBeats Music(アップルのストリーミング・サービス)が見て見ぬふりをする問題に、Googleの存在がある。Spotify(スポティファイ)ではない。検索エンジン大手のGoogleは、この競争のために十分な資金力を有した唯一の競合であり、また、もしレーベルが協力しなければ、ストリーミング・サービスを長期にわたり“(利益の出ない)客寄せ商品”にしてしまうことになる。

 コメント要請に対し、アップル、ワーナー・ミュージック・グループ、ユニバーサル・ミュージック・グループからの返答は今のところない。ソニー・ミュージックエンタテインメントはコメントを拒否している。