マシュー・ボーン「白鳥の湖」待望の再来日 男だけの白鳥、セクシー、モダンな舞台で普遍的な愛を描く
マシュー・ボーン「白鳥の湖」待望の再来日 男だけの白鳥、セクシー、モダンな舞台で普遍的な愛を描く

 世界を熱狂の渦に巻き込んだマシュー・ボーン「白鳥の湖」が待望の再来日。王子と白鳥のラブストーリーはスタイリッシュな舞台へ変貌を遂げ、驚きと恍惚と新鮮さに満ちた物語へ。ザ・スワンにマルセロ・ゴメスを迎えての豪華なトリプルキャストが実現した。

 切ないオーボエの旋律で序曲が始まり、白鳥のシルエットだけが描かれた幕が上がる。英国王室を思わせる紋章が刻印された巨大な白いベッドに王子が眠っている。背景には巨大な窓が。夢か現か、王子はそこに大きく浮かび上がる白鳥の影を見る。これが物語の始まりだ。1950~70年代のイギリス・ポップカルチャーを感じられるような怪しげなクラブ、公園の湖畔、そして王室の舞踏会などのモダンな舞台を背景に、物語は進行していく。古典の「白鳥」を知らずとも、台詞が無くとも、その演技と踊りが音楽にのせられ雄弁に語りかけてくる。バレエに親しんだことが全く無い人でも、ストーリーテリング、そして衝撃のエンディングまで、息つく間もないほど興奮すること間違いなしだ。
 
 古典の「白鳥の湖」を知り尽くしたバレエファンにとっては、役どころやストーリーの相違、音楽の使いどころなどが気になるところだろう。古典を知り尽くしたダンサーたちが作り上げるこの舞台、細かい違いを発見すること「だけ」でも、めいっぱい楽しめる。やはり特筆すべきは白鳥たちの踊りだろう。実際の白鳥の動きを観察して振り付けられたこの白鳥たちの動きは、「古典」の白鳥と大きく違い、いかにも“白鳥”らしいのだ。男性達だけが扮するこの特別な白鳥たちは、ダイナミックさとセクシーさに満ちた動きで見ている者の眼前に迫ってくる。2幕の白鳥群舞の登場シーン、コミカルな4羽の白鳥の踊り、そして男性特有の跳躍力や力強さを感じられる大きな白鳥の踊りは、まさに圧巻だ。

 この「白鳥の湖」、1995年にロンドンにて世界初演以来、チケットは常に即刻売り切れ、バレエ作品としては異例のロングランをブロードウェイで果たすなど、大成功を収めて全世界に衝撃を与えてきた。1999年度トニー賞において最優秀ミュージカル演出賞、振付賞、衣裳デザイン賞の3冠に輝き、またローレンス・オリヴィエ賞など、30以上の国際的な賞を受賞している。

 公演は9月21日まで、渋谷の東急シアターオーブにて開催。どのキャストが出演するかは、当日発表となっている。お目当ての出演者に当たるまで通い続ける楽しみ方も。キャストの組み合わせ次第でザ・スワンと王子の関係性は様々な化学変化を起こす。何度観ても違う発見があり、違う感動に立ち会えるだろう。あなたは、どの「ザ・スワン」に出会えるだろうか。text: yokano

◎公演概要【マシュー・ボーンの白鳥の湖】
プレビュー公演:9月6日(土)~7日(日)
本公演:9月9日(火)~21日(日)
会場:東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ11階)
演出・振付:マシュー・ボーン
美術:レズ・ブラザーストン
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
出演:ニュー・アドベンチャーズ
ゲストダンサー:マルセロ・ゴメス(アメリカン・バレエ・シアター プリンシパル)

マシュー・ボーン「白鳥の湖」公式サイト
http://www.swan2014.jp/

マシュー・ボーン「白鳥の湖」公演紹介動画
http://youtu.be/jkAsB1voM5g

写真は9月9日公演
ザ・スワン/ザ・ストレンジャー:マルセロ・ゴメス
王子:クリストファー・マーニー
(C)Hidemi Seto