ロシアの音楽ストリーミングサービス“Zvooq(ズヴーク)”は、ロシアのeコマース企業Ulmartにフィンランドの未公開株式投資ファンドEssedel Capitalが参加して行われたシリーズA資金調達にて、2,000万ドル(約21億円)を獲得した。この資金注入は、著作権侵害行為の温床として知られるロシアに変化が起きていることを示している。

 Zvooq(ロシア語で“音”の意味)は、価格設定、アクセス、カタログのありふれた手法をとっている。広告付きの無料サービスと広告なしの有料サービスの2本柱。PC、スマートフォン、タブレットで利用できるマルチプラットフォームのストリーミングサービス。50万のアーティストと25,000レーベルによる1,500万曲のカタログを保有している、といった具合だ。

 しかし、他サービスとは異なる点もある。Zvooqはロシア、ウクライナ、ベラルーシのほか旧ソ連9か国で展開し、欧米に比べてどこも競合の少ない市場だということ。また、価格設定でも違ったアプローチがあり、無制限・広告なしというSpotify型の料金モデルではなく、1日にアルバム3枚を聴ける月額33ルーブル(91セント/約95円)と、1日7枚聴ける66ルーブル(1.82ドル/約189円)の2つの料金プランがあるという。

 資金の主な使用用途は2つ。ひとつは、ソーシャルネットワークや携帯電話会社の提供サービスを直接統合できるプラットフォームとして“増強、推進”すること。2つ目は、“開発途上の世界のテリトリー”への展開の足掛かりに使用するとのことだ。

 ロシアでは、音楽が海賊行為から合法的なサービスへと変わりつつある。ザ・モスクワ・タイムズ紙が述べているように、新しい著作権侵害法が市場を合法的な方向に動かす助けになっているのだ。3月に下院が反海賊法をすべての著作物と著作隣接権に拡大する法案を通し、その数週間後には3大音楽グループがロシアのSNS“VKontakte(フコンタクチェ)”に対して140万ドル(約1億4,500万円)の損害賠償を求め告訴した。

 世界中どこでもそうだが、ロシアでの海賊行為は脅威でもありチャンスでもある。1億4,300万人の同国における可能性について、SpotifyのCEO、ダニエル・EKは先月のインタビューにて、ロシア最大の音楽サイトはVKontakteであり、「そこの人々を有料会員に変えることができれば、音楽業界は成功する」と述べている。

 これがまさしくZvooqの役割だ。共同創立者のヴィクター・フルムキンは資金調達を発表したプレスリリースにて、「わが社は混乱状態にあるロシアの音楽市場に秩序をもたらそうとしています。エンドユーザーの最高のリスニング体験と、パートナーにとって統合しやすいサービスを届けることにより、アーティストたちに収益と自覚をもたらす楽しく合法的な音楽市場を造ります」としている。