新世代UKソウルを背負って立つセクシャル・マイノリティ、サム・スミスとは?
新世代UKソウルを背負って立つセクシャル・マイノリティ、サム・スミスとは?

 先頃、サム・スミスのデビュー・アルバム『In The Lonely Hour』が本国UKでリリースされたが、なんとシングル「Stay With Me」はナショナル・チャートで初登場1位を記録してしまった。この5月に22歳になったばかり、リリー・アレンとも親類関係にある若きロンドンっ子シンガーが、今後のアルバム・チャートでどのようなアクションを見せてくれるのか、俄然楽しみな状況になっている。

 サム・スミスの名前を広く知らしめたのは、気鋭の兄弟ダンス・ポップ・ユニットであるディスクロージャーのシングル「Latch」だった。ディスクロージャーは英米ダンス・チャートで成功を収めると共に、アルーナジョージやロンドン・グラマーといったUKの実力派新人アーティストを次々にフックアップ&フィーチャーしたが、その中にはサム・スミスを迎えた“Latch”も含まれていたわけだ。

 英BBCは今年初頭、新人の期待度ランキング<Sound of 2014>でサム・スミスを1位に選び、また米国においてはビルボードが<14 Artists to Watch 2014>のうちの一組に選出。ディスクロージャーと揃ってテレビ出演を果たしたり、この4月にはコーチェラ・フェスティヴァルで共演パフォーマンスを披露するなど、話題を呼んでいる。ソロ・シンガーとしてのサム・スミスは、2013年に切なく狂おしいデビュー曲「Lay Me Down」やEP『Nirvana』を発表。ノーティ・ボーイのコンセプチュアルなアルバムにも参加し、2014年に入るといかにもポスト・ダブステップの世代感覚と呼ぶべきエレクトロ・ソウルのシングル「Money On My Mind」を届けてくれた。冒頭で触れた最新シングル「Stay With Me」は、ピアノの調べと力強いコーラスに後押しされたミディアム・テンポの美曲だ。

 待望のデビュー・アルバム『In The Lonely Hour』は、前述のシングル群はもちろん、壮麗なフィリー風ストリングス・アレンジとナイーヴなフォーキー・ソウルの間を行き来する「Good Things」や、70年代ニュー・ソウルばりの王道感を漂わせる「I’m Not The Only One」などを収録し、奥行きのあるヴォーカル・アルバムとして仕上げられている。更にデラックス盤では、初期EPにも収められていた「Latch」のアコースティック・ヴァージョンや、ノーティ・ボーイとのコラボ曲「La La La」、そしてサム・スミスを熱烈サポートしているBBCレディオ1のDJ=ゼイン・ロウがプロデュースしたダンス・チューン「Restart」にも触れることができる。

 アルバム・リリースとほぼ時を同じくして、自身が同性愛者であることもカミングアウトしたサム・スミス。新世代UKソウルを背負って立つホープの物語は、まだ始まったばかりだ。

Text:小池宏和