現在、アメリカでは1972年2月15日以前にレコーディングされた楽曲が連邦法で保護されていないため、デジタル・ラジオ・サービスがそれら楽曲を使用する際に著作権使用料を支払っていない実情がある。これが米音楽業界で争点になっているのだが、米デジタル著作権料徴収機関のSoundExchange(サウンド・エクスチェンジ)が5月29日、古い楽曲の扱われ方を変えようと連邦法改定のキャンペーンを開始した。

 同“プロジェクト72”では、1972年2月15日を境に録音された楽曲の扱いが異なる米著作権法のねじれを軸におき、小規模サイトの立ち上げや、29日付の政治新聞ポリティコに広告を掲載するなどの運動をしている。“プレイする曲すべてに支払いを”とデジタル・ラジオ・サービスへ向け呼びかける同広告は、B.B.キング、スプリームス、スティーリー・ダンのメンバー、ザ・ビーチ・ボーイズ、ロザンヌ・キャッシュ、マーサ・リーヴス、シンディ・ローパー、アル・グリーンなど、アーティスト70組以上からの公開レターという形をとっている。

 インターネット・ラジオ、サテライト・ラジオ、ケーブル・ラジオのように法定免許を要するサービスは、SoundExchangeに著作権使用料を支払わなければならない。しかし、1972年以前に録音したものをデジタル演奏する場合、現在は州法のみが対象となるため、ネット上で展開するラジオ・サービスのPandora(パンドラ)やSiriusXM(シリウスXM)などは1972年以前の曲に対し著作権使用料を支払っていないのだ。

 この新しいRESPECT法案が通過すれば、1972年以前の曲も連邦著作権法の対象となる。Pandoraでは5%、SiriusXMでは15%の曲が該当することから、かなりの金額が関わってくるのだ。SoundExchangeは、昨年使用された1972年以前の曲は6000万ドル(約60億円)相当だと推定。2013年に28%増加するなど、その成長率は毎年倍増しており、問題の著作権使用料が年間1億ドル(約102億円)になるのも近いとしている。