ワイルド・ナッシング 今年2度目の来日公演で見せたさらなる可能性
ワイルド・ナッシング 今年2度目の来日公演で見せたさらなる可能性

 今年3月のソールドアウト公演も記憶に新しいジャック・テイタム率いるワイルド・ナッシングの今年2度目となる来日公演が10月31日に渋谷クラブクアトロにて行われた。

 3月の初来日公演時よりコーチェラ、ボナルー、ロラパルーザとアメリカの3大音楽フェスすべてに出演、ツアーも精力的にこなし、経験を積んできている分、大分演奏が自然になっているというのがまず第一印象。ジャックは、同じテレキャスを曲ごとに自身でチューニングして演奏するのだが、前回に比べ、もどかしい間がなく、然程時間もかからず的確にこなしている姿からも明らかに成長が感じられる。

 2ndアルバム『Nocturne』のタイトル・トラックの艶やかでエモーショナルなギターラインにのってライブはスタートし、原曲より幾分かテンポアップし、ライブ感が増した「Golden Haze」、内に秘めた憂いと光を帯びた柔かなシンセ・サウンドとのバランスが絶妙な「Only Heather」と流れるようにパフォーマンスが進んでいく。MCも曲が終わるごとの「アリガトウ」、この日はハロウィンということもあり、素っ気なく「ちなみに今日はハロウィンだね。」と触れるぐらい。マイペースかつストイックに淡々とその音世界を紡いていく職人気質なのも彼らしい。

 中盤に差しかかり「Paradise」のイントロが、大きな歓声に迎えられると、跳ねるようなベースラインとともに体を動かしながら、ようやくジャックも笑みを浮かべる。今回、特に印象的だったのが、本編のラストを飾った5月にリリースされたEP『Empty State』からの「Ride」。躍動するギター、突き抜けるドラム、空間を包み込みながら歪むシンセが織りなす重厚でサイケデリックなグルーヴに、時たま不安定なジャックのファルセットが絡み合い、7分強に及ぶ壮大な音のウェーヴと化し、押し寄せてくる。この曲のライブでの完成度の高さ、そしてその巧みなアレンジから、他にEPから「Dancing Shell」と「Ocean Repeating」しか演奏されなかったのは少し残念だったが、シューゲイザー、浮遊感溢れる瑞々しい80sサウンドを軸とした現在の音楽性から、まだまだその可能性は広がりつつあることを証明してくれた。

 そしてじわじわと綿密にビルドアップされてきた高揚感は、アンコールの定番となったエネルギッシュでメロディアスな「Summer Holiday」で最高潮に達し、約70分に及ぶ公演が終了。終演後に仮装をした高校生、大学生などで溢れかえる渋谷の街に足を踏み出すと、まるで異次元体験をしたかのように、現実に引きずり戻される感があまりにも鮮烈だったのは、あの空間にいた観客全員が感じたのではないだろうか。

【Wild Nothing @ 渋谷クラブクアトロ セットリスト】
2013.10.31
01. Nocturne
02. Confirmation
03. Ocean Repeating
04. Golden Haze
05. Only Heather
06. Live In Dreams
07. Paradise
08. This Chain Won't Break
09. Counting Days
10. Dancing Shell
11. Rheya
12. Shadow
13. The Blue Dress
14. Ride
Encore:
15. Gemini
16. Summer Holiday

PHOTO: SHOICHI KAJINO