AERA dot.

写真の殿堂 2017.8 選出作品

このエントリーをはてなブックマークに追加

選者より総評にかえて(小林紀晴)

 今月の殿堂入りは池田孝保さんの「流れ星」という作品を選ばせていただきました。打ち上げられた花火を、カメラを横にスライドさせながら露光することにより、あたかも流れ星のように見せています。斬新、果敢、不思議な一枚です。花火といえば、三脚を据えて長時間露光により撮るのが定番ですが、固定概念にとらわれない発想に敬服いたします。こんな一枚に出会うと、まだ撮られていないもの、試されていない方法や世界はもっとあるのではないか。そんな気がしてきます。
 この「写真の殿堂」のコンテストの募集も残すところ、あと一回となりました。最後です! 奮ってのご応募おまちしております!



1位(殿堂入り)

作者:池田孝保さん/タイトル:流れ星

作者:池田孝保さん

タイトル:流れ星


原稿を書く際に気がついたのですが、先月に続き殿堂入りに輝きました。花火大会での花火を、カメラを横にスライドすることで、あたかも流れ星のように表現しています。発想が斬新です。先月の亀の写真にも共通する柔軟さがあります。

2位(佳作)

作者:pon-chanさん/タイトル:ヌシの跡

作者:pon-chanさん

タイトル:ヌシの跡


タイトルの「ヌシ」が一体何を意味しているのかは不明ですが、動物が通り過ぎた痕跡のような連想が働きます。増水により河原の草木がなぎ倒されたようにも見えますが、実際のところはわかりません。だからこそ面白いのです。動物の毛並みのようにも映りました。

作者:求磨川貞喜さん/タイトル:屋根

作者:求磨川貞喜さん

タイトル:屋根


迫力があります。おかめの面でしょう。それにしても巨大です。背後の屋根と大きさが不釣り合いです。望遠レンズでグッと寄ったことにより、より主張する写真になりました。周辺部が落ちているのと黒々とした青空も内容に合っています。

3位(入賞)

作者:曳地正刀さん/タイトル:しんどい

作者:曳地正刀さん

タイトル:しんどい


若者でしょうか。自転車での長旅だと思われます。暑さと疲労でバテ気味なのでしょう。本来、走っているべきものがこうして停滞していると、逆に新鮮です。なんでもない風景が、意味あるものに映り出します。低いアングルにより青空が強調されました。

作者:田村祐二さん/タイトル:獰猛の翁

作者:田村祐二さん

タイトル:獰猛の翁


可愛い顔をしていますが、コメントには「獰猛なオオスズメバチ」とありました。「少しうつむいた瞬間、触覚の上の黒い模様が目のように見えました」ともあります。極力情報を減らしてくことで、余韻を残しながら別のものに変換されていきます。

作者:池田まつ子さん/タイトル:背比べ

作者:池田まつ子さん

タイトル:背比べ


とても綺麗な写真です。コメントにもありましたが、中央に立っている少女がとにかく美しい。あたかもアザラシと対話しているかのようです。仮にアザラシとこの少女だけの絵柄だったら、かなり見応えのある一枚になったでしょう。

作者:村松克則さん/タイトル:ミラー

作者:村松克則さん

タイトル:ミラー


動物園でシロサイを撮影しています。タイトルの意味は背後に同じように別のシロサイがいるからですが、単純に皮膚の質感が面白いと感じました。頭部が切れているからこそ、物体としてその存在が強調されました。

作者:西尾拓也さん/タイトル:街角

作者:西尾拓也さん

タイトル:街角


スクエアの構図にこだわりがあるようです。他の画角にはない魅力が確かに存在します。縦と横への広がりが均一なため、最後に視線が真ん中に集まるからでしょう。だからこそ、逆に奥行きが感じられました。

作者:岸一也さん/タイトル:人影

作者:岸一也さん

タイトル:人影


写されているものは「強化樹脂製の給水タンク」とのことです。雨で汚れ、人影のように見えたようです。私には細かい線が排水口に溜まった髪の毛に見えてきました。具象が抽象を経て別の具象を見る行為、とでもいえばいいのでしょうか。

作者:Corazonさん/タイトル:それでも遊びたい

作者:Corazonさん

タイトル:それでも遊びたい


やはり最初に右腕の包帯に目がいきました。「サッカーの試合で腕を骨折した」そうです。その姿はどこか哀愁が漂っています。顔が見えないからこそ、想像が膨らみます。サッカーのグラウンドではなく、遊具との組み合わせも絶妙です。

作者:北野信男さん/タイトル:警備員

作者:北野信男さん

タイトル:警備員


故郷の花火大会とのことです。どこかのんびりしています。警備の方でしょうか。花火とかなり距離があるので、別の仕事をしている時に、たまたま背後に花火が上がったようにも映りました。その分断された感じが素敵です。

作者:鷲見昌俊さん/タイトル:Water

作者:鷲見昌俊さん

タイトル:Water


おそらく特別なものは何もない、平凡な海か湖などで撮影されたはずです。ストロボを使い、さらにしぶきと女性の動き加わることで、分類できない一枚が出来上がりました。何をしているのか、何の続きなのか。わからないところが妙で、魅力です。

作者:築地カメラさん/タイトル:Palm of her hand

作者:築地カメラさん

タイトル:Palm of her hand


さまざまなことを想起させる一枚です。地上に現れた蝉の命はあっという間です。すでに命を消した姿が皺だらけの手の平に乗っています。見事な皺です。命のスピードは、両者違います。時間の流れも違うのかもしれません。

このエントリーをはてなブックマークに追加