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写真の殿堂 2017.3 選出作品

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選者より総評にかえて(小林紀晴)

 今月の殿堂入りは、かね子はるさんの作品です。セルフポートレイトです。セルフポートレイトの応募は毎月一定数ありますが、断然、女性からの応募が多い特徴があります。理由はわかりませんが、男性には自分自身を撮る欲求が多くはなく、そんな発想にはあまり至らないのでしょうか。考えてみれば、私自身もそうですが……。セルフポートレイトに限らず、絵画の肖像画の世界でも自己の内面に寄り添う傾向が強いと思うのですが、かね子はるさんの作品はそんな印象を、簡単に吹き飛ばしました。とても動的で、大胆です。一見セルフポートレイトには見えませんが、右手にはしっかりシャッターのレリーズ。けなげで、同時にユーモラスにも感じられます。それでいて、やはり微かに内面を照らしだしています。素敵です。また、驚くような動的なセルフポートレイトを是非見せてください!



1位(殿堂入り)

作者:かね子はるさん/タイトル:無題

作者:かね子はるさん

タイトル:無題


セルフポートレイトです。何故か中国服を身につけています。ということは太極拳などと関係あるのでしょうか? なにより大胆な構図です。硬い光に透明感があります。一般的なセルフポートレイトの概念を軽々と超えていて、勢いと清々しさがあります。

2位(佳作)

作者:関萌野さん/タイトル:息吹

作者:関萌野さん

タイトル:息吹


何気ない写真です。これといった目新しさがあるわけでもありません。それでいて、ふと目がとまる写真でした。ざらつきがあるからです。おそらく、「こと」を確実に感じさせるからでしょう。人と花、さらに撮影者の三角関係の「こと」がここにはあります。

作者:村松克則さん/タイトル:キリン舎

作者:村松克則さん

タイトル:キリン舎


考えてみれば、キリンは何をもってキリンと知らしめられているのでしょうか。多くの場合、首だと考えがちですが、この写真を見ていると、もしかしたら足や身体の模様なのかしれないと思わせます。背後の人影がより奥行きを感じさせます。

3位(入賞)

作者:madowaQさん/タイトル:微熱

作者:madowaQさん

タイトル:微熱


セルフポートレイトです。花瓶に息を吹きかけているのでしょう。ふと、二酸化炭素という言葉が浮かびました。花瓶の中に息を吹きかけ、また吸い込む。何度も繰り返していると、花瓶の中の二酸化炭素の濃度はどんどん上がっていきます。自分自身の濃度もきっと増します。

作者:pon-chanさん/タイトル:「朱」

作者:pon-chanさん

タイトル:「朱」


ここはどこでしょうか。かなり山深いところのようです。鳥居がひとつ。この先に社があるのかもしれません。抑制された視線が効いています。鳥居以外のものを大きく取り込んだことにより、結界、畏れ、緊張といったものを逆に強く印象付けています。

作者:tadeenさん/タイトル:花は桜木

作者:tadeenさん

タイトル:花は桜木


今年も桜の季節が北上して行きました。あたかも桜の花時間だけが止まっていて、人間の時間の方がその前を毎年過ぎていくかのようです。だから切なくなるのでしょうか。桜は華やかでありながら、どこか死の匂いを漂わせています。今日はお彼岸でしょうか。

作者:海道松男さん/タイトル:思春の頃

作者:海道松男さん

タイトル:思春の頃


大人でも子供でない、あるいはそのどちらでもある。それがこの年代でしょう。大人と同じものを見ていても、きっと違って見えているはずです。この写真からそんなことを感じました。ここに二人がいるだけで、平凡な場所が特別で美しく、儚く色を変えていきます。

作者:岸一也さん/タイトル:ゴミ箱

作者:岸一也さん

タイトル:ゴミ箱


コメントには「あまり見かけなくなった戸外のゴミ箱」とありました。私もほとんど見かけたことがありません。フォトジェニックです。美というものは、自然や、創作された物の中にだけあるのではないと、おおいに気づかせてくれます。

作者:求磨川貞喜さん/タイトル:冬の造形

作者:求磨川貞喜さん

タイトル:冬の造形


実際は、庭の植木に雪が積もった様子だそうですが、風雪に耐える山岳のハイマツだと当初見えました。そんな荒々しさがありました。部分をうまく切り取ることにより、そんな強さがよく表現されています。モノクロにしたのも効果的です。

作者:檀上純一さん/タイトル:火渡り

作者:檀上純一さん

タイトル:火渡り


とても迫力ある一枚です。しばらく見ているうちに、状況がわかりました。無病息災を祈り、親子で火渡りを行っている場面です。珍しい状況だけにインパクトがあります。なにより祈り、人の想いといった内面を強く感じさせます。

作者:池田孝保さん/タイトル:伝統文化への視点

作者:池田孝保さん

タイトル:伝統文化への視点


とても不思議な写真です。どうやら窓ガラスの奥に「年代ものの雛人形」があり、周りには反射した像が写っているようです。なにより雛人形の表情がいいですね。真正面からとらえたことで、存在感と、それゆえの怖さがひしひしと伝わってきます。

作者:田中たつやさん/タイトル:昼寝の男

作者:田中たつやさん

タイトル:昼寝の男


こんな一枚、とても好きです。状況はよくわかりませんが、昼寝をしているようです。広角レンズによる、あたかも投げ出すような即物的な撮り方が逆に、感情に訴えてきます。ありのままが、ありのままではなく見えてくるからです。

作者:Yuto/びーとるさん/タイトル:春

作者:Yuto/びーとるさん

タイトル:春


菜の花を若い女性がくわえているだけなのに、実にエモーショナルです。目に涙をためているように見えるからでしょうか。この近距離と、きれいなボケ味の効果により、あたかもこの女性が本当に眼前にいるかのようで、存在と臨場感があります。


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