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写真の殿堂 2017.2 選出作品

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選者より総評にかえて(小林紀晴)

 先月は殿堂入りはありませんでしたが、今月は酒居誠さんの「田吾作さん」という作品を選ばせていただきました。選評にも書かせていただきましたが、このお祭りに私も最近行ってきたばかりです。そんなこともあり、その場の状況はある程度把握できるつもりです。だからこそ、写真というのは無限の広がりを持っているのだと、改めて思い知らされました。見たい、撮りたいという強い欲求が、本来誰にでも見えているはずなのに、「見えていないもの」を吸い寄せる力を引き出すからです。大胆に近づいたことにより、本来、人の顔が持っているはずの固有性を失いました。だからこそ、立ち上がって見えてくるのです。



1位(殿堂入り)

作者:酒居誠さん/タイトル:田吾作さん

作者:酒居誠さん

タイトル:田吾作さん


福井県勝山の左義長祭りでの一コマのようです。実は私も先日、初めてその祭りへ足を運びました。この作品はこれでもかと被写体の男性に近づいたことにより、見事に異化されています。このギリギリさに敬服します。モノクロでコントラストの高い絵づくりも見事です。

2位(佳作)

作者:西正幸さん/タイトル:出発進行

作者:西正幸さん

タイトル:出発進行


京都の祇園祭でしょうか。山車の一部が見えます。手前は路線バスのようです。祭りという非日常と日常、あるいはハレとケのコントラストが見事に表現されています。バスの運転手さんのマスク姿と全体がパンフォーカスなのが効いています。

作者:築地カメラさん/タイトル:self‐portrait

作者:築地カメラさん

タイトル:self‐portrait


タイトルからするとセルフポートレイトのようです。相当近づいているため、顔がデフォルメされているのでしょうか。顎の下の影が顔の続きにも見えています。水玉模様の影が網タイツを被ったようで、ユーモラスであり、恐ろしくもあります。


3位(入賞)


作者:f.murataさん/タイトル:手を伸ばせば

作者:f.murataさん

タイトル:手を伸ばせば


壁に西日が当たっています。そこに作者自身の左手でしょうか、長い影が伸びています。影ってこんなに長く見えるものなのかと単純に驚きます。西日が遠い日の記憶と結びつき、ざわざわと感情が動き出します。エモーショナルな一枚です。


作者:HATAさん/タイトル:ガールフレンド

作者:HATAさん

タイトル:ガールフレンド


コメントに「直接言う事よりも、ケータイ・スマホの時代」とありました。時代を強く意識した一枚だと気がつきます。多くを考えさせられます。けっしてレトロ感だけでは終わっていません。糸がピンと張っていないところがミソです。


作者:池田孝保さん/タイトル:恋人さんの元旦

作者:池田孝保さん

タイトル:恋人さんの元旦


合成がほどこされた一枚です。とはいえ同一のカップルのようです。だからからでしょうか、リズム感があります。行進しているように感じられました。コントラストの高いモノクロにして周辺を落としているのも、内容に合っています。

作者:北野信男さん/タイトル:行く夏

作者:北野信男さん

タイトル:行く夏


京都タワーと鉄腕アトム。意外と重なるテイストだと感じました。鉄腕アトムの足の先の噴射した炎が和ロウソクのようにも見えてくるからです。手前のブレた女性の姿が現実の続きで、全体のバランスを支えています。

作者:求磨川貞喜さん/タイトル:寒い朝

作者:求磨川貞喜さん

タイトル:寒い朝


てらいのない一枚です。通勤途中に気になって一瞬だけ立ち止まったかのような視線です。つまり、日常の続きを、呼吸をするかのように撮影しています。素敵です。だからこそ美しく、凛と張り詰めた空気感がよくでています。

作者:madowaQさん/タイトル:Rotten

作者:madowaQさん

タイトル:Rotten


タイトルは「腐った」という意味です。そんな花びらが目を覆い隠しています。おそらくセルフポートレイトだと思いますが、何を暗示しているのでしょうか。想像が膨らみます。女性は花に同化し、花は女性に同化します。そこにあやうさと儚さがあります。

作者:村松克則さん/タイトル:風景の記録

作者:村松克則さん

タイトル:風景の記録


景勝地として有名な三保の松原です。私も幼い頃に行った記憶があります。それぞれがそれぞれに写真を撮っています。こんな一枚を拝見すると、人は何故、何のためにカメラを構えるのかという根源的なことについて考えさせられます。

作者:小代尚毅さん /タイトル:蓮の花

作者:小代尚毅さん

タイトル:蓮の花


蓮の花の写真はコンテストには多く応募されてきますが、こんな蓮の花を拝見したのは初めてです。人の手、それも男性の手のようです。泥か墨でしょうか、指が汚れているようにも見えました。本来の姿から遠いからこそ強く訴えてきます。

作者:写真部員さん/タイトル:登る男

作者:写真部員さん

タイトル:登る男


砕石場の山です。ここで起きている「こと」について考えさせられます。何故、この男性はここを登っているのか。「こと」が無為な行為には思えないのです。明確な理由がないようでいて、実は重大な何かがあるはずだと思いたくなります。

作者:tadeenさん/タイトル:白

作者:tadeenさん

タイトル:白


無機的な風景です。温かみはありません。それでいて人の気配が濃厚なのは、すべて人が作り上げた風景だからでしょうか。あたかも空まで人が作り上げたかのように見えてきます。どういうわけか穏やかな気持ちにさせてくれます。


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