AERA dot.

写真の殿堂 2016.07 選出作品

このエントリーをはてなブックマークに追加

選者より総評にかえて(小林紀晴)

 殿堂入りには、かね子はるさんの「portrait-肖像-」という作品を選ばせていただきました。セルフポートレイトですが、このコンテスト全般では珍しいタイプの作品です。後処理も含めて、とても完成度が高いものでした。考えてみればセルフポートレイトとは不思議なジャンルです。撮影しているときは当然ながら、その姿を見ることができないからです。だからこそ、撮影前にイメージしているもの、そして実際に撮影されたものとの差異、さらには写真から離れた、自分自身に対する自分のイメージとどう合致させていくのか、あるいはどう裏切って発展させていくか。奥深いものがあります。突き詰めれば、セルフポートレイトとは離れた撮影でも、おおいに応用できるはずです。



1位(殿堂入り)

作者:かね子はるさん/タイトル:「portrait-肖像-」

作者:かね子はるさん

タイトル:「portrait-肖像-」


セルフポートレイトです。低めの彩度とハイキーな処理により、日常性、現実感が薄れています。コメントには「私であって私でないものを撮りました」とありました。きっとご本人が知っている自分の姿とは大きく違うのでしょう。「化ける」という言葉が浮かびました。歯の矯正がよいアクセントです。

2位(佳作)

作者:pon-chanさん/タイトル:「刻(きざみ)」

作者:pon-chanさん

タイトル:「刻(きざみ)」


てらいのないストレートな一枚です。一切、奇をてらったところがありません。お祭りとか神事などが終わったあとでしょうか。けっしてクライマックスではありません。だからこそ、作者の視線、静かな意思といったものが透けて見えてきます。やわらかな光もいいです。

作者:村松克則さん/タイトル:「曲線」

作者:村松克則さん

タイトル:「曲線」


動物園の象の鼻のあたりだけを切り取っています。影が背後の壁にのびることによって、妙な奥行き感を醸し出しています。実に平面的に見えてきます。調子を硬く、そしてざらつかせることによって、よりインパクトがでました。版画のようでもあります。

3位(入賞)

作者:日本髪さん/タイトル:「今日も外は雨ね」

作者:日本髪さん

タイトル:「今日も外は雨ね」


かなり大胆な構図です。左側の女性の身体の半分以上が切れてしまっています。ドレスアップしているところから、日常ではないことがわかります。タイトルが窓の外側をより意識させます。同時に「出来事」を感じさせます。

作者:岸 一也さん/タイトル:「アロエベラ」

作者:岸 一也さん

タイトル:「アロエベラ」


コメントによれば、「アロエベラ」とのことです。明らかに枯れています。枯れた植物はフォトジェニックなものですが、この作品は、大胆な構図と光から、よりインパクトが強い作品に仕上がりました。作者の意思を読み取ることができます。

作者:北野信男さん/タイトル:「うつつ」

作者:北野信男さん

タイトル:「うつつ」


一見バラバラな写真の集まりに見えますが、微妙なラインで繋がっています。センスを感じます。一枚目は動的です。二枚目三枚目と生々しさを感じさせたあと、四枚目でポンと静的な写真で突き放すことで、全体の強弱、バランスを取っています。

作者:AORさん/タイトル:「夏ノ日」

作者:AORさん

タイトル:「夏ノ日」


冷たい食べ物を手にしています。冷たすぎたのでしょうか? お母さんは目をつぶっています。笑ったあとのようにも見えます。とにかく、不意に現れた一瞬の表情を見事にとらえています。背後が暗く落ちているのも、インパクトにつながりました。

作者:中根 弘貴さん/タイトル:「Cousin Niece」

作者:中根 弘貴さん

タイトル:「Cousin Niece」


いとこのお子さんを撮った一枚のようです。どこか大人びています。視線の先はどこに向かっているのでしょうか。レンズの絞りを開放気味にして撮っていると思うのですが、ボケ具合がとても綺麗です。背後もよく選び、光を読んでいます。

作者:求磨川貞喜さん/タイトル:「少年」

作者:求磨川貞喜さん

タイトル:「少年」


コメントよれば、お孫さんとのことです。「カメラを向けると孫がおどけて見せた」とありました。そのおどけによって、不思議でインパクトのある一枚となりました。ただ、背後の焼き込みが少し大げさで気になりました。自然な仕上げでいいと思います。

作者:madowaQさん/タイトル:「息」

作者:madowaQさん

タイトル:「息」


おそらくセルフポートレイトだと思うのですが、ぎょっとする怖さと凄みがあります。内面とか、心の内が皮膚の表面に張り付いてしまったかのような気がしました。唇と手の表情が独特で、見る者を立ち止まらせます。

作者:仙兵衛さん/タイトル:「無常」

作者:仙兵衛さん

タイトル:「無常」


こんな一枚を拝見すると、人間が暮らすこと、その時間の積み重ね、そして時間の連なりについて考えさせられます。時間はすぎていくが、土地とか場所はいつまでも留まったままなのかもしれません。それでもきっと少しずつ姿を変えていくのでしょう。

作者:檀上 純一さん/タイトル:「浮 遊」

作者:檀上 純一さん

タイトル:「浮 遊」


果たして、これはどんな場面なのでしょうか?詳しいことはわかりませんが、エロティックな場面です。ただ、モノクロ、粗粒子、明暗を反転することで、なまめかしさが薄れています。それがあまり見たいことのない新鮮さに結びつきました。

作者:徳永 隼さん/タイトル:「無題」

作者:徳永 隼さん

タイトル:「無題」


豚です。そう書けばその通りなのですが、妙な力を持っています。ストロボを効果的に使うことで、体毛と手前の柵の質感が同質になりました。暴力的な力もあります。さらに、よく見てみれば、豚の目が悲しげで、心に残りました。
このエントリーをはてなブックマークに追加