「痴漢冤罪」が話題に上ることが多いが、実はこの数年、全国の都道府県で迷惑防止条例が続々と改正され、「盗撮冤罪」にも気をつけなければならない事態となっている。例えば警察官に「盗撮」を疑われた場合、どうしたらいいのだろうか? 『アサヒカメラ2017年7月号』で、撮影に関する法律問題に詳しい三平聡史弁護士に話を聞いた。
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警察官に迷惑防止条例違反の「盗撮」を疑われた場合、撮影した画像を警察官に見せれば、わいせつ目的の画像を撮影していないことは簡単に立証できます。しかし、運悪く、以前撮影した自分の子どもの入浴写真が写っていたらどうか? 児童ポルノ禁止法により、18歳未満の児童のわいせつな写真を所持しているだけでも罰せられるため、特に子どもの裸は要注意なのです。
こんな話をすると、「自分の子どもの写真が児童ポルノと間違われるなんて!」と突拍子もない話を持ち出していると思われてしまうかもしれません。しかし、数々の冤罪事件は、たまたま不運な条件が重なり、それがまるで犯人であるかのように見えてしまうことから起こる悲劇です。
写っている写真が自分の子どもであることは本人には明白であっても、警察官などの第三者にはわかりません。実際に児童ポルノを所持している犯人だって、「これは自分の子どもの写真です」と言い逃れる可能性はあるからです。
職務質問に応じて写真を見せるのはあくまで任意です。また、万が一「警察署でじっくり話を聞きたい」と言われた場合も、同行するかどうかは任意ですから、もちろん拒否することはできます。
ただ、拒否したところであらぬ疑いが強まるだけで、いいことは何もありません。そのため、警察官の職務質問には素直に対応したほうが賢明です。また、それ以外にも自衛手段はあります。
たとえば、撮影しないときはレンズキャップを装着すること。常に撮影可能な状態にしておきたいと思うかもしれませんが、動画で盗撮する人も多いため、そうした疑いを払拭することもできます。
次に、カメラの日時設定をきちんと行っておくこと。撮影日時がわかると、いざという時に強い証拠となります。
もう一つ大切なのは、SDカードなどの記録媒体に大量の写真を入れっぱなしにしないこと。管理の面でもその日に撮ったものは速やかに自宅のハードディスクなどに移すことが望ましいのですが、それがあらぬ誤解を回避することにもつながります。
相手や警察官に画像を見せる場合、もし過去のデータを入れっぱなしにしていると、その日に撮った写真以外も見せることになるからです。
「自分は人に疑われるような写真は一切撮影していない」というのならともかく、数日前にふざけて撮った、誤解を招くような写真が残っていれば、あらぬ疑いをかけられかねません。記録媒体は毎回クリーンな状態にしておくことで、写真を人に見せるにしても最小限の枚数で済みます。
迷惑防止条例違反の「盗撮」が増えたことで、わいせつ目的とはほど遠い写真愛好家が肩身の狭い思いをしていることは残念なことです。しかし、「盗撮」の定義をきちんと理解し、被写体とトラブルになったり、警察官の職務質問を受けたりしても、身分を明らかにして謙虚な対応をすれば大きな事態に発展することはまずありません。萎縮せず堂々と写真を撮り、主張すべきことはきちんと相手に伝えることが大切だと考えます。
※『アサヒカメラ2017年7月号』より抜粋