トップ  >  アサヒカメラ  >  コラム/特集  >  鉄道を撮りにいこう 課題作品と講評

鉄道小風景をめぐる旅 第4回 米屋浩二 米屋こうじ

このエントリーをはてなブックマークに追加

バックナンバー | アサヒカメラ.netトップへ

 

温もりをもとめて北条鉄道へ

 北条鉄道は兵庫県小野市の粟生駅から加西市の北条町駅まで13.6km を結んでいる。若桜鉄道と同じく、旧国鉄から引き継がれた第三セクター鉄道だ。
 距離や雰囲気は若桜鉄道にも似ているが、低い山々に囲まれた沿線の風景は、より穏やかな印象を受ける。
 北条鉄道を旅先に選んだ最大の理由は、この路線にある播磨下里駅を訪問したかったからだ。播磨下里駅では高野山で学んだ住職・畦田清祐(うねだ・せいゆう)さんがボランティア駅長を務める。
 実は4年ほど前、或る雑誌の取材で播磨下里駅に畦田さんを訪ねたことがあった。その時、畦田さんにお目にかかって、その温かいお人柄が伝わってきたことを今も覚えている。再び畦田さんに会って話を聞きたいと思った。
 
 
12. 法華口駅は開通当時からの木造駅舎。地域の人々が駅周辺の掃除などをし、手入れされている。北条鉄道法華口駅で。 キヤノンEOS7D、タムロン18-270mm F/3.5-6.3Di II VC PZD、1/200 秒、F5.6、ISO200、WB: くもり
 
13. 駅舎から少し離れて撮影をしていると、タイミング良く愛犬を連れた自転車のおじさんが通っていった。北条鉄道法華口駅で。 キヤノンEOS7D、タムロン18-270mm F/3.5-6.3Di II VC PZD、1/1250 秒、F5.6、ISO200、WB: オート
 
 北条鉄道の列車は起点となる粟生駅を出ると、一面黄金色に染まった田んぼを車窓に映した。残暑はいつまでも厳しいが、季節は確実に進んでいることを思い知らされた。
 列車は最初の駅、網引駅に停車。数人の乗客が下車すると、エンジンを噴かしてゆっくりと網引駅を発車した。動き出したその直後、何気なく車窓を眺めていると、駅そばの田んぼに「案山子」を発見した。所在なさげに立つ案山子は、いかにも手作り感たっぷりで、僕のハートは一瞬にして惹きつけられた。
「案山子と列車を一緒に組み合わせて撮影がしたい」そう思うと、すぐにでも案山子の居る田んぼに行きたくなった。
 
 
16. ホームに木々が繁茂している駅が北条鉄道には多い。北条鉄道網引駅で。 キヤノンEOS7D、タムロン18-270mm F/3.5-6.3 Di II VC PZD、1/400 秒、F8.0、ISO200、WB: くもり
 
14、15. 車窓から目に留めた網引駅そばの案山子を撮ろうと引き返してきたら、ちょうど案山子を片付けている最中だった。 お願いして、列車が通るところを案山子と一緒に1枚。列車が通過してからの方がイイ笑顔だった。北条鉄道田原駅から網引駅間で。 キヤノンEOS7D、タムロン18-270mm F/3.5-6.3Di II VC PZD、1/200秒、F10.0、ISO200、WB: オート
 
 やや考えた末、2つ先の法華口という駅で列車を降りて、タクシーで網引駅に戻ることにした。幸い駅前にはタクシー会社の看板があり、電話で呼び出すことができた。
「案山子を撮りたくて!」と乗り込んだタクシーで興奮気味に運転手へ話すと、
「そうなんですか(笑)」と、僕と同年代位の彼は楽しげだ。
ところが、田んぼに着くと、案山子の数が減っている。畦には1台の軽トラが停まり、よく見ると案山子を撤収している最中ではないか。何というタイミング......。
「もう、片付けるんですか?」作業する年配の農夫に話しかけると、
「そろそろ稲刈りで、邪魔だからね」と言った。
僕があまりに落胆の表情をしたのか、
「あんた何処からいたしたの」と今度は逆に質問された。
「埼玉からです」
「そりゃ大変だ、それじゃ、もういっぺん立てるかいな」と、優しい言葉をかけてくれた。
でも、それでは余りにも申し訳ないので、「ならば」と、列車が来た時に、案山子とお父さんを一緒に撮らせてもらうことにした。
 
17. 北条鉄道の沿線風景は、決して絶景というわけではないが、伸びやかな風景に囲まれている。北条鉄道長駅から播磨下里駅間で。 キヤノンEOS7D、タムロン18-270mm F/3.5-6.3 Di II VC PZD、1/1000秒、F6.3、ISO200、WB:太陽光アサヒカメラ月例コンテスト
 
 
 
 

このエントリーをはてなブックマークに追加