
ネットの普及に伴って、消費に関わるかなりの部分は出かけないでも注文、購入が出来るようになった。いわゆる物販/通販ばかりではなく、各種のサービスもしかり。旅行業界でも、各航空会社、旅行会社が自前のツアーの予約販売を受け付けるようになって久しい。
インターネット上だけで旅行取引を行う旅行会社は、オンライン・トラベル・エージェント(OTA)と呼ばれる。日本だけでなく海外のOTAもどんどん日本に進出しており、旅先が国内にかかわらず旅行の予約は海外OTA経由ということも珍しくなくなってきた。
ただし、海外OTAは日本の法律である旅行業法に基づく登録をしていないことがほとんどで、予約までのステップや実際の宿泊時にトラブルになることもそれなりにある。実際、どんなトラブルが起きているのだろうか。
「海外OTAを通じた予約によるトラブルは、この4、5年で市場の拡大に伴って確かに増えています」。こう話すのは、一般社団法人ECネットワーク理事の沢田登志子さん。ECネットワークはインターネット取引に関する一般消費者からの相談を受け付けている団体だ。
沢田さんによれば、苦情の内容は5年間で大きく変わってきたようだ。当初は「キャンセル条件が曖昧」「キャンセルができたのに、返金されない」といったキャンセルに関する苦情が多かったが、海外の大手OTA各社が表示方法を改善してきたことで、徐々に減少。一方で、現在は予約後のトラブルが増加しているという。その中身は、「カスタマーサポートに問い合わせても返答がない」「期待していたツアー内容と違っていた」「知らない間に二重予約になって倍の金額を請求されていた」といったツアーの詳細にかかわるケースが多い。沢田さんは、「おかしいと思ったらその場で交渉することが大切。日本とはスタンスが違う場合もあるので、海外OTAに対する理解を高めていくことも重要です」とアドバイスする。
一方、日本のOTAではどうか。たとえば、日本の大手、楽天トラベルは、海外ホテル予約の利用者に対し、24時間365日のサポートを提供している。楽天トラベルのトラベル事業長の山本孝伸さんは、「ただでさえ不安な海外旅行を人の顔が見えないインターネットでしてもらうからには、二重予約をはじめとする現地のトラブルに、コストをかけてでも最大限のサポートを提供すべきだと考えています」と話す。
国内旅行市場におけるオンライン旅行販売額は2兆9000億円で全体の33%にものぼる。特に宿泊施設の予約におけるOTAのシェアは2013年に75%に達している(フォーカスライトJapan調べ)。オンライン旅行取引の拡大やトラブルの発生に伴い、国も対策に動き出している。
観光庁は、トラブル防止に向けて、旅行取引サイトで必要な表示に関するガイドラインを策定するため、有識者による「OTAガイドライン策定検討委員会」を2015年1月に設置。3回の会合を経て、OTAガイドラインの案をまとめた。サイトのトップページに事業者の概要、問い合わせ先、契約先を明示すること、キャンセルの仕方や条件などの具体的な説明をわかりやすく盛り込むこと、などが主な内容だ。4月中には公表し、日本人向けのサイトを運営している海外OTA17社に遵守を直接呼びかけるほか、一般消費者向けにわかりやすくまとめたリーフレットも制作する考えだ。
備えあれば憂いなし。事前に気をつけたいポイントを押さえておくことで、賢くて便利な旅の選択肢はさらに広がりそうだ。