「子どもの声がうるさい」などと苦情を受け、長野市が公園の廃止が決めた報道は大きな話題になった。子どもと騒音の問題が注目を集める中、都市部では園庭のない保育園の増加も無視できない問題だ。AERA 2023年2月6日号の記事を紹介する。
【写真】近隣住民からの苦情を受け、長野市が3月末での廃止を決めている青木島遊園地
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現在、国は園庭を持たなくても保育園の開設を認めている。そのため、都市部で新設される園は、園庭の無い園も多い。保育園を考える親の会の「100都市保育力充実度チェック」によると、2017年度の園庭保有率は100市区平均で76.6%だったが、22年度は69.8%に。東京23区平均では53.6%から39.8%へと大幅に低下した。千代田区、中央区、文京区、港区は園庭がある園は2割に満たない。
「園庭がないことで隣の敷地と建物が近くなり、窓を開ければすぐ隣の家、という状況を生んでしまいました。そうなると窓は開けにくくなる。園庭はいろんな意味でバッファーになっていたはずなんです。子どもが遊ぶだけの役割に留まらず、音も日当たりも風通しにも影響を与えます」(「こどものための音環境デザイン」代表理事の船場ひさおさん)
園庭がない場合、近隣の公園などで外遊びをさせるしかなくなる。同じような園がいくつもある地域では、小さな公園に何十人もの園児がひしめく状況も生まれている。そんななか、新たに認可保育所を開設する際に、なるべく園庭を設けることを条件に増園を進めてきたのが東京都三鷹市だ。
「自前の園庭があれば、遠くの公園にわざわざ連れていく必要がありません。立地的に難しいという園も一部ありますが、保育の質の確保の観点から園庭設置をお願いしてきました」(担当者)
このかいあってか三鷹市内の保育所は園庭保有率が84.3%(22年度)だ。
住宅街と比べて騒音苦情が少なく見える駅近の園。通勤にも便利なため、親にとっては利点も多いが、子どもにとっては問題もある。船場さんは、幹線道路沿いや高架下の保育施設が増えていることに懸念を示す。