続いて、「この間の展覧会などは人が沢山いるので、なんとなく気取って若々しく見せるように努力していますが」と書いています。実際にお会いした方はご存知でしょうが、努力したり無理したりして若々しく見せているようには全く見えません。若い=美しい、という世間によくある美意識は少し置いておくとしても、横尾さんはカッコいいことは間違いありません。横尾さんのカッコよさ(健康という意味もありますが、ご本人に否定されそうなので、カッコいいと表現します)の秘訣を推測すると、まず、お酒を飲まないことです。ご本人は酒を飲めないとのことですが、お酒で健康を害したことがある自分にしてみれば、飲まないことも、いいことだと感じます。

 そして、甘いものをよく召し上がることです。甘いものが身体にいいという医学的根拠はありませんが、つまりは好きなものを食すことです。

 何よりのポイントは、人の話をよく聞き、いろいろと取り入れることにあると感じます。

 横尾さんのアトリエにお邪魔して、お話をすると、「それ、面白いネ」とこちらのお話をよく聞いてくださいます。横尾さんが創作活動をするところを撮影したドキュメンタリーでは、スタッフが換気のために持ってきていたサーキュレーターを見て、今描いている絵の中に、写し取ったのです。なぜ、サーキュレーターを絵に入れたのですか、とお聞きしたら、「カタチがね、面白いんで、描いてみた」と。

 見たもの、聞いたもの、これはいいと思ったものをすぐさま取り入れる感度の高さ、柔軟性、そして芸術に昇華させる才能。これぞ、横尾忠則という天才だと恐れ入りました。

 実はこの「往復書簡」も、その時々にお話ししたことを元に原稿を何度もご執筆いただいています。この生き方がカッコいい秘訣だと考えていますが、横尾さん、いかがでしょうか。

 実はこれは瀬戸内寂聴さんにも当てはまるのです。

 ここ数回、秘書の瀬尾まなほさんが瀬戸内さんの普段のご様子を描写されていましたが、まなほさんの言いつけを守って(?)愉しそうに日々を過ごされているご様子が眼に浮かびます。瀬戸内さんのことを思って、まなほさんが叱ると、イタズラっ子のように反抗したり、また素直に従ったりと、愉快で温かく、そしてカワイイ(失礼!)瀬戸内さんのお人柄が文章にも表れて、読んでいると心が豊かになってきます。

 瀬戸内さんは少しお休みですが、より元気になって、温かく優しい、そして愉しいお話をお聞かせください。

「週刊朝日」編集部は、お待ちしていますよ。

週刊朝日  2021年11月19日号

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