二十四節季では1月6日からは「小寒」、1月20日からは「大寒」と、一年で最も寒い時期にあたります。太平洋側では乾燥した気候が続き、各地で最低気温が記録されるなど、「寒中」を実感する時季でもありますね。
寒い時には温かな食べ物が欲しくなりますし、体力をつけるために滋養のあるものをとっておきたいもの。冬の歳時記には、これらのヒントとなる、この時季ならではの食べ物の季語が記載されています。
今回はその中から、身近でありながら身体によい食べ物を調べてみました。

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冬が旬!日本にもあるジビエ料理

滋養のあるものといえば、近年ブームとなっているのがジビエですね。ジビエはフランス料理の呼び名ですが、実は一年のうち冬が旬の食べ物であることをご存じでしょうか? そこで、まずはジビエについて。
○そもそもジビエとは?
ジビエとは狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉を意味し、ヨーロッパでは貴族の伝統料理として古くから発展してきました。その昔、フランスなどでは、ジビエ料理は自分の領地で狩猟ができるような上流階級の貴族の口にしか入らないほど貴重なものだったそうです。
日本でも昔から狩猟が行われ、冬季の11月~2月ころまでが狩猟解禁となっています。日本で有名なジビエといえば、害獣のシカ、イノシシなどですが、実は狩猟の対象となっている野生鳥獣はすべてジビエとして定義されます。野ウサギをはじめ、山鳩、真鴨、小鴨、尾長鴨、カルガモ、キジ、コジュケイ、最近話題のカラス、またフランスでは狩猟禁止で貴重なタシギ等の鳥類や、ヌートリア、ハクビシンといった珍しい動物も含まれているそうですよ。(参照:日本ジビエ振興協会)
○ジビエが滋養によい理由とは?
ジビエが身体によい理由は、野生の肉を食べることにあります。冬の野生の鳥獣は脂肪分が少ないわりに栄養価が高く、高たんぱく低カロリー、ビタミン、鉄分、亜鉛の含有量が高いとされています。
ジビエは、歳時記にも「薬喰い」という季語があるほど、食べると薬代わりになるといわれ、西洋でも日本でも生活の知恵が生んだ共通の滋養食となっているようですね。

季語になっているスーパーフード

ジビエはフランス語ですが、日本にもジビエを表す季語や、「寒」を乗り切るスーパーフードがあります。そのいくつかご紹介しましょう。
○何の肉? 「紅葉鍋」「牡丹鍋」
身体を温める鍋は冬の定番料理で、ほとんどが季語なのですが、中でも先ほどの「薬喰い」がヒントの鍋料理が「紅葉鍋」(もみじなべ)「牡丹鍋」(ぼたんなべ)です。
実はこれ、鹿肉と猪肉のこと。むかし仏教では肉食が禁止されていましたが、寒の時期だけ薬として食べていたのがこれらの肉だったそうです。特に鹿肉は、冬以外は美味しくないといわれていて、鹿の隠語「もみじ」から「紅葉鍋」、イノシシの隠語「牡丹」から「牡丹鍋」と呼ばれています。
○旬の魚「寒鰤」「寒鯉」
「鰤」(ぶり)は北陸地方が代表の冬の魚で、特に「寒鰤」は脂がのっていて美味しいとされています。ちなみに、この地域では鰤の大漁を告げる冬の雷を「鰤起し」と呼んでいるそうです。
「鯉」(こい)は、東日本では長野県や群馬県などでお祝いの席で食べられている滋養食材。「寒鯉」はまるまると太っている鯉のこと。
○風邪予防に「根深汁」
「根深汁」は聞きなれない言葉ですが、要は「葱の味噌汁」のこと。関東地方の葱は白いところまでが土に埋まり、その先に根があるので「根深」(ねぶか)と呼ばれています。むかしから風邪に効く野菜として知られ、冬の葱は甘いのが特徴です。葱たっぷりの味噌汁は、いかにも身体が温まりそうですね。
○これぞ庶民の滋養食「寒卵」
卵は一年中食べられ、価格も安定している庶民の味方。それだけでもスーパー食材と呼びたいところですが、実は「寒卵」が最も栄養価が高いといわれています。というのも、寒さのため鶏が産む卵の数は通常より少なく、一つにより栄養がつまっているといわれているからです。最近では、卵は一日に何個食べても問題ないという研究もあるようですから、この季節は毎日食べたい食材ですね。
(参照:俳句歳時記(春~新年) 角川学芸出版 角川文庫/入門歳時記 大野林火・著 角川学芸出版)

先人の知恵がつまった「寒」の季語

いかがでしたか? ── 言葉や漢字の成り立ちを知ることは、日常生活に膨らみを持たせてくれるはず。
現代は一年中手に入らない食材はない時代です。しかし、むかしから伝わる知恵は侮れないかもしれません。極力旬の食材を食べる、地産地消など、意識するだけで違ってきそうですね。
特に冬しか食べられないジビエは機会があればぜひ食べてみたいもの。「寒」を無事に乗り切ったあとは、もうそこに春が待っています。