松飾りは取れましたがまだお正月気分がのこっていませんか? 今日は11日。お供えしていた鏡餅を下げてお汁粉や雑煮にして食べる「鏡開き」の日です。これで新年のお祝いのものはすっかり姿を消し、いよいよお正月も本当に終わるのだなぁと実感できるのかもしれませんね。今はプラスチック製の鏡餅の中にパックされた切り餅が入っているものが多く出まわり、便利に使われている方も多いことでしょう。お正月の間中飾られてすっかり固くなった、あの大きなお餅をたべるのはなかなか大変だったんですよ。ご存じでしたか?
この記事の写真をすべて見る供えた鏡餅を下げる日「鏡開き」がなぜ11日なのでしょうか?
まあるいお餅を大小重ねた鏡餅。お正月になるとあたりまえのように飾っていますが、神様への捧げ物なんです。昔から鏡は祭祀に用いられ大切にされてきました。その鏡の形にならって作られた餅が鏡餅です。神様に差し上げた後の餅を下げてくるのが今日の「鏡開き」です。
武家では男子は具足(鎧兜など武具一揃い)に供えていましたから「具足開き」、女性は鏡台に供えていた鏡餅を下げるこの日に、初めて鏡を見ることから「初顔祝い」「初鏡祝い」といったそうです。男子は刀の柄から「刃柄(はつか)」、女性は「初顔(はつかお)」から20日に鏡開きが行われていたということです。それが11日になったのは江戸時代、三代将軍徳川家光が4月20日に没したことによるそうです。先の将軍の月命日に鏡開きはどうも、ということでしょう。仕事始めにあたる11日に行うようになったということです。これは武家のしきたりからきていますから、商家や町家の「鏡開き」は11日とは限らず地域やそれぞれの家の風習で行われているようです。または旧暦の6月に行われる歯固めまで取っておく、というところもあるそうです。神様からのお下がりですから、力を頂くために祝いの日に使いたい気持ちはわかりますね。
固くなった鏡餅。さあどうやって使いましょう? 無駄にはしませんよ!
床の間をはじめ神棚や仏壇、台所と神様のいらっしゃるところ、または守って頂きたい場所にお供えをした鏡餅ですが、日が経ち鏡開きのころにはすっかり固くなっています。さてどうしましょうか? 武家では「切る」というのは嫌われます、そこで槌で叩いて割るのをよしとしたとか。でも「割る」という言い方はいい意味とは言えません。そこで「割る」の忌み語として「開く」がつかわれました。口に出す言葉には魂が宿るとする日本人らしい考え方ですね。
大きな鏡餅は扱いやすい大きさにして、お汁粉や雑煮にしていただきます。小さく割って乾燥させてから油で揚げれば美味しい揚げおかきになります。固くなったお餅は水につけておき、水を含ませてから蒸して、再び搗き直せばお餅としてよみがえります。そこに豆や青海苔を混ぜて、かき餅にして干せば季節を越えて楽しめます。
子供の頃は鏡開きが楽しみでした。お供えしている鏡餅が全部下げられてきます。供えてあった場所によってはカビが生えていたり、亀裂の入いりかたも乾燥具合でひとつひとつ違っていました。おばあちゃんやお母さんがカビを削って落とし、力いっぱいに割ってそれでも難しい時には男手をたより、工夫しながら食べやすい大きさにしていた姿を覚えています。そうやってできたお汁粉はお正月最後の楽しみでした。時々ちょっとカビの匂いがするお餅に出会うと「これは台所にあったお餅だな」と顔をしかめながら食べたのは懐かしい思い出です。
一年という時をかけたお米から作った大切なお餅は、最後まで無駄にすることなく食べられていたのですね。