(画像は「劇場版「鬼滅の刃」無限城編 』第一章 猗窩座再来』」公式HP「人物紹介」より https://kimetsu.com/anime/mugenjyohen_movie/)
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 「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 猗窩座再来」が18日に公開され、「無限列車編」以来の盛り上がりを見せている。同作においては、多くの〝きょうだい〞が登場するが、風柱・不死川実弥と弟の玄弥の関係は少々複雑だ。

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 新刊「鬼滅月想譚 ――『鬼滅の刃』無限城編の宿命論」を著した植朗子氏は、不死川兄弟と竈門兄妹の「共通点」と「違い」について分析している。同書から一部を抜粋変更してお届けする。

【※以下の内容には、既刊のコミックスのネタバレが含まれます。

*  *  *

■『鬼滅の刃』の対称的な「きょうだい」

 『鬼滅の刃』ではたくさんの〝きょうだい〞のエピソードが語られています。物語は〝鬼の襲撃〞という悲劇からはじまるのですが、長男である竈門炭治郎が妹の禰豆子のために「人としての生」を取り戻してやろうと奮闘します。どんな困難にあっても、彼らは決して離れようとはしません。一蓮托生ともいえるこの兄妹の覚悟と、互いへの深い愛情に、私たちは心を動かされてきました。

 そして、『鬼滅』では竈門兄妹と対照的に描かれている〝きょうだい〞がいます。風柱・不死川実弥と弟の玄弥です。不死川兄弟と竈門兄妹は「弟/妹」という違いこそあれ、複数の共通点で結ばれていました。

 いずれも親と弟妹を亡くしていること、鬼の襲撃から生き残った2人だけの家族であること、父母が存命の頃から「しっかり者」として家族を支える人物だったこと、鬼を滅殺せねばならないという強い意志を持っていることです。

 しかし、実弥は玄弥を置いて、ひとりで〝鬼狩りの道〞に進みます。なぜ、実弥は「弟とともに鬼と戦う道」を選ばなかったのでしょうか。鬼殺隊を見れば、大正という時代設定の影響もあって、女性より男性の剣士の方が多いのは明らかです。「兄と妹」が前線に立つことより、「兄と弟」が一緒に戦うことの方が物語上は自然なような気もします。ただ、実弥は鬼殺隊という組織の中に玄弥がいることを望みませんでした。

■「鬼の力」を宿す禰豆子と玄弥

 さて、禰豆子と玄弥には「鬼化」という、もう一つの特別な共通点があります。そのため彼らは普通の人間よりもはるかに〝死ににくい〞のです。しかも彼らは、鬼になっても人間の心を失わない、極めて希少な存在で、鬼殺隊にとって非常に大きな意味を持つ者でした。実際、彼らが秘めている「鬼のパワー」は鬼殺隊の危機を何度も救っています。それでも、実弥はそれを決して許そうとしません。

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