
雅子さまは、晩餐会であっても訪問着に帯留めや指輪、イヤリングといたアクセサリーは身につけない。それが一層、着物の優美さを引き立てる。
そして一見、控え目な柄行でも職人による最高峰の技巧が込められているのが、皇后さまのお着物だ。
原さんによれば、葉の意匠に用いられた希少な技術のひとつが、もち米や糠を主成分とした「真糊(まのり)」による「糸目」の技術だという。
友禅染は、まず図柄の輪郭を細く絞り出した糊(のり)で、生地に描く工程からはじまる。生地を染め残して輪郭を優美な白い線で表現するのが「糸目」の技法だ。
さらに、葉の白い部分は、胡粉(ごふん)という白い粉を塗ることで艶を抑えた質感に仕上がっているという。
雅子さまをはじめとする女性皇族は、国際親善の接遇の場に着物で臨むことも少なくない。
しかし、着物を着こなすのは体力が必要だ。ましてや海外訪問といった注目の集まる国際親善では全方位に人の目やカメラが回るため、気が抜けない。ましてや、モンゴル訪問のように大草原に足を運んだり、天候に恵まれなかったりする場面など着物が不向きな場もある。
「そうした状況を鑑みると、実用的な洋服で臨まれるのは当然です。一方で、皇后さまは、そのお洋服に、日本の職人技が込められた着物の生地を用いることで、日本の伝統工芸を海外の方に伝えてくださった。それは我々、着物に携わる職人や人間によって何より価値のあることで、嬉しいことでした」
8日間のモンゴル訪問から帰国された陛下と雅子さま。7月18日からは、長女の愛子さまもそろって、那須の御用邸での静養に入られた。
(AERA 編集部・永井貴子)
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