
そうしたなかで、雅子さまが和の伝統工芸を施した生地を洋服に仕立てたように、ファッションブランド「イッセイミヤケ」も絣(かすり)や絞りの生地を用いたデザインをパリ・メンズファッションウィークで発表するなど、日本各地に残る伝統技術を洋服に生かす挑戦も行われつつある。
原さん自身も、和装アパレルブランド「Play KIMONO」で、小袖Tシャツといった商品を展開するなど新しい試みに挑戦しているひとりだ。
ただし、和服の生地で洋服を仕立てる際に、「和服」感が出過ぎると、洋服のスタイルに馴染みにくくなるなど、バランスが難しいという。
「その点、皇后さまのお召し物は、『絞り染め』の共布を用いた帽子も合わせて、生地もデザインもエレガントに仕上がっている。さすがだと感心します」

この日に先立つ7月8日、雅子さまは、モンゴルのフレルスフ大統領主催の晩餐会で京友禅の訪問着をお召しだった。
象牙色の地に白い葉が描かれた、シンプルな訪問着だ。
通常、晩餐会での和装といえば、地紙や宝尽くしといった吉祥柄を、金箔などで豪華に仕上げた着物をお召しのことが多い。
しかし、この日の雅子さまは、
「白い葉を際立たせるために、淡いグリーンである白緑(びゃくろく)色のぼかしと、メインになる葉には金駒(きんこま)刺繍を加えて品よく仕上げた訪問着をお召しでした」(原さん)
晩餐会で、夜間の男性の正礼装とされるのは、燕尾服(ホワイトタイ)または民族服。準礼装とされるのが、タキシード(ブラックタイ)または民族服だ。晩餐会でのドレスコードがどちらになるのかは、相手国との相談の上で決められる。
この日の晩餐会では、モンゴルの大統領も天皇陛下もスーツにネクタイ姿。雅子さまもドレスコードに合わせて、華美過ぎず優しい柄行を選ばれたのだろう。